2017年は社団戦の新規チームに助っ人(?)という形で参加させていただいた。駒を持ちチェスクロックを叩く実戦は10年以上ぶりであったが、個人成績は初日3-1、最終日2-0、2日目と3日目は鈍器で頭を殴られたような衝撃のため思い出せない(要約:負けすぎた)。ラス前にチームの4-3勝ちに貢献し、その白星が物を言って残留を決めたため、最低限の役割は果たせたといったところであろうか。
来年以降の捲土重来を期するとともに、自分の指した将棋を振り返ってみるということで、今回から何度かに分けて社団戦の将棋をご笑覧いただきたい。無論ながら自戦記を書くこと自体も久しぶりであるため、対局と同じく勘を取り戻しつつの執筆となることはご容赦のほどを。
まずは社団戦初日の第1局より。団体戦特有の「○○偶数先」「△△奇数先」という掛け声にも郷愁のような思いを抱きつつ、局面は第1図を迎える(筆者が後手)。
先手の陣形は対振り飛車としてはかなり独創的な駒組みだが、これは後手がツノ銀からの陽動振り飛車という趣向を凝らしたため。筆者の将棋を昔からご存知の方ならピンと来るのではないだろうか(歳月が経過しても採用する戦法は変わらない)。
例によって1度6三に上がった銀を引いて高美濃に組んでいるため、筆者は後手番の上に2手損している計算だが、これも毎度おなじみのことなので気にはならない。
それよりも第1図では「先手の5筋の位と2枚の銀が手厚い。このまま押さえ込まれるような展開になっては、振り飛車側がまずい」という懸念を抱いていた。

第1図以下の指し手
△5四歩 ▲同 歩 △同 銀
▲5五歩 △4五銀 ▲同銀直 △同 歩
(第2図)

第1図で無難な手は△8二玉であろう。玉を高美濃に入城させていかにも自然な一手だ。
だが先手も桂馬を7七に跳ねた以上、それには▲6五歩が予想される。平凡に桂交換に応じても形勢を損ねるわけではないだろうが、居飛車だけ一歩を持つ、8八の角筋が通るなど相手にとって利点が多い。
その前に自分から手を作ったほうがいい、という対局観に基づいたのが本譜の手順である(今振り返ってみれば△8二玉▲6五歩に△6二飛もあったかもしれない。『四間飛車の急所(1)』
4五の地点で銀交換をして第2図。▲4五同銀は△5五角がある。▲3七桂には△1五角と端角に出られて対応が悩ましい。▲4三銀は飛車を逃げておいてひとまず大丈夫。▲5四銀は有力そうだが最悪△5二銀から千日手模様……などと読んでいたのだが、実戦ではそれらを複合した手順で、居飛車側は手を作ってきた。

第2図以下の指し手
▲4三銀 △3一飛 ▲3七桂 △1五角
▲4五桂 △3七角成▲1八飛 △4一飛
▲5四銀成△5二歩 (第3図)
▲4三銀には飛車を横に逃げる手もあるところだが、3四に銀を成る手を牽制するため本譜のように引くことにした。続けて▲3七桂に△1五角が実現し、これは指せるのではと思ったところに▲4五桂。後手は馬を作ったものの空成りで、しかも次に▲4二成銀と飛車を殺される手が残っている。
筆者がその手に途中まで気づかずにいたのは極秘事項だが、とりあえず△4一飛と避けつつ銀に当て、以下▲5四銀成にも△5二歩と受けて第3図。
この局面をどう見るか。後手は馬を作り、飛車はまだ自陣とはいえだいぶ楽な格好になった。持ち駒に銀もあり手は作れそう。一方で居飛車は桂馬をさばいたとはいえ、自陣の大駒の働きは今一つといったところ。
もちろんまだまだ形勢は難しいと思うが、少なくとも筆者が第1図で抱いた「このままでは押さえ込まれる可能性がある」という不安は、振り飛車側としては充分に解消されているのではないだろうか。
実戦は第3図以下▲6五歩△2七銀?(△3六銀不成~△4五銀を狙ったものだが、このあたりのセンスの無さも健在)と進み、7一玉型特有の▲8三桂というタダ捨ての筋(当然筆者は見えてない)なども喰らったものの、致命傷には至らずに済んだのだが、そのあたりの終盤のハイライトは次回に掲載させていただくことにする。
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