
右玉は言うまでもなくバランス重視の受け身の戦法であり、相手がどのような囲いかに関わらずガンガン攻めるというわけにはいかない場合が多い。穴熊に組んでくれれば玉は堅くとも駒が偏るため敵陣のバランスが悪くなり、角の打ち込みの隙などが出来やすくなり(第1図でも▲8三角が目につく。△5二角と受けられてしまいそうだが)有り難い、というのがかつて右玉使いだった筆者の考えなのだが如何であろうか。

穴熊を指さない(どころかむしろ目の敵にしている)身としてはよく分からないが、先手の攻めを後手が受けるという展開も穴熊の立場としては不本意ではないだろうか。もともとが角換わりの後手番である以上それは仕方ない、とも言えるかもしれないが。

大会の将棋ではなく内輪の公式戦だが、持ち時間も40分あり筆者なりに気合いを入れて臨み、局面は第3図。この▲4一角が痛打で、3二の金が不安定なこともあり6三の地点が受けづらい。△6二飛なら▲6五桂△8二銀▲8四歩がある。
本譜は△6四歩だが▲6五歩△2二玉▲6四歩△同銀▲7四角成と馬を作りはっきり先手良し。以下そのまま押し切って勝利をものにした。
渡辺明ブログに詳しい解説が掲載されているため山崎-渡辺戦には軽く触れるに留めておくが、「右玉に対して穴熊は有効なのか」ということを考えさせられた一局であった。偶然にも銀河戦の本戦Cブロック2回戦 堀口弘-村田戦でも一手損角換わりから後手が右玉に組み、対する先手が矢倉から穴熊に囲い直している(▲8八金~▲8六銀~▲7七桂と玉の裾を自ら開けるというかなり特殊な駒組みだったが)。
「右玉に穴熊は損」というのはやはり間違った感覚なのか。損得は時と場合によりけりという柔軟な思考で対処するのが一番という気もするが、皆さんの御意見を伺ってみたいところではある。
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