四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

新人王戦・決勝三番勝負第一局 渡辺-千葉戦詳報

 遅ればせながら将棋世界12月号を購入。当ブログでも取り上げた新人王戦・決勝三番勝負第一局の渡辺-千葉戦が、千葉五段の自戦記という形で掲載されていた。それを元に、詳報という形で同局を再度取り上げてみたい。

第1図 実戦は第1図より△4一飛▲6八角△5一角…と進みじっくりとした戦いになったが、「△4一銀▲6八角△5二銀と繰り替えておくのがよくある順」とこちらの変化にも触れている。「本局の4日後の対局ではそう指した」とカッコ内にあるが、これはC級1組順位戦第六回戦の中座-千葉戦に間違いないだろう。
 △4一銀▲6八角△5二銀以下は「▲4六歩△同歩▲同角に△6五歩と反撃し、激しい展開になる」とある。△6五歩以下は▲5五歩△同角▲同銀△4九飛成▲4六銀△1九竜▲4八飛が一例だ(参考1図)。
参考1図 これは『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』P187~189にも詳しく載っている手順である。同著では参考1図以下△6六歩▲同金△6四香なら▲2二角、△9六歩▲同歩△9七歩▲同香△8五桂の端攻めも▲4九歩と竜の利きを止めて、いずれも先手良しとの見解が示されている。
 対照的に千葉五段の自戦記には「△1九竜(参考1図の一手前)……の踏み込みに自信がない訳ではなかったのだが。」という一節がある。具体的にどういう手順が用意されていて「自信がない訳ではなかった」のか、是非とも知りたいところだ。

 駒損が激しく、また筆者自身は受け身の棋風ということもあり、個人的には参考1図のような変化は気が進まないのだが…さらに興味深いのはこの展開を小見出しで「踏み込めなかった変化」と称し、「せっかくの大舞台だし、じっくりと戦いたい(中略)本当はただ腰が引けていただけなのかもしれない」と記されている点にある。
 本局に臨むにあたって千葉五段に緊張の色が濃かったのは「角道を開ける前にハンカチで何度か手をぬぐわなければならなかった」と自戦記でも語られている通りであるが、こうした心理が対局開始直後はともかく肝心の将棋の内容自体に影響してしまったのが、結果的にもやはり問題ではなかったのだろうか。
 羽生四冠は言うに及ばず、森内名人も泰然自若とし自らのペースを崩さない。佐藤康光棋聖はいわゆる「十七番勝負」でも見せた通り、周囲の予想をことごとく覆すような手順・作戦を用いて羽生四冠と激闘を繰り広げた。本局の対戦相手である渡辺竜王にしても、竜王戦七番勝負の大事な初戦において公式戦未経験の一手損角換わりを採用して、見事に白星を飾ったのは記憶に新しいところだ。
 このように、四人のタイトルホルダー達には大舞台における緊張が、少なくとも盤上の具体的な指し手には表れていないように見受けられる。一方の千葉五段は激しい変化に踏み込めず、結果的に本人いわく「ひたすら辛抱の苦しい展開」を余儀なくされてしまった。このあたりに何か「差」を感じてしまうのは筆者だけであろうか。筆者ごときがご高説を垂れるのはおこがましいかもしれないが、自身なりに大事な対局を何度も経験し、その度に千葉五段と同じような心理状態に陥った経験が少なからずある(特に団体戦において)筆者には、とても他人事とは思えないのだが…。

第2図 本局に戻って第2図。ここでの△4一飛が自戦記では「失着」、「形は悪いが△5二飛としておくべきだったか」とある。自身で読み返してみたら当ブログの記事でもちらっと触れていた(目の付け所は間違っていないというわけか)。
 ただし▲5五歩と合わせられるくらいで嫌味という筆者の意見は的外れ、急所の筋は▲6五歩のようだ。「△同桂▲6六歩には△8五歩▲6八角△8四角と反撃する順がある」。なるほど▲6五歩と桂馬を取られても△4八歩成が実現すれば釣り合いは取れていそうだ。本譜は2筋を破られ「ついにダムは決壊してしまった」。
第3図 第3図での△6五同歩も▲5五桂という華麗な手を実現させてしまい疑問だったようだ。△4六とがまだしもとのことで、これも一応▲6四歩△同銀▲6五歩△5三銀▲6四桂くらいで支えきれない…と筆者自身が簡単に検討している。
 しかし千葉五段の自戦記では▲6四歩△同金とこちらで取り、そこで▲1一竜で「まあ少し悪いのだが」という解説。なるほど△6四同金ならば▲6五歩を△同金と取れる。先手もそれを決めずに▲1一竜と香車を補充し、今度こそ▲6五歩(△6三金は▲6四香、△同金は▲6三香)を狙うのが確かにプロ筋だ。

 観戦記ではなく自戦記ということもあり、個々の指し手や変化に留まらず、実戦心理にまで言及されており非常に興味深い内容であった。参考1図以下の手順は研究課題としておきたい。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://4kenbisya.blog11.fc2.com/tb.php/149-fca82dbe
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。