四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

後手藤井システムの苦悩

 B級2組順位戦の三局目は小野-泉戦を見て行きたい。後手の泉七段が藤井システムを採用したのに対して、小野八段も▲3六歩を突かず真っ向から居飛車穴熊を目指して第1図。
 この形には疎い筆者なりに調べてみたところ、同一局面が三局発見された。有名どころでは森下-羽生戦(2004年3月12日・竜王戦)があり、先手の森下九段は▲8六歩と突いている。その他の二局も▲5五歩、▲3六歩と着手はそれぞればらばらで、本局もここでの小野八段の指し手が注目されるところだ。

第1図  第1図以下の指し手
 ▲6八角 △6五歩 ▲9八玉 △4三銀
 ▲8八銀 △6六歩 ▲同 銀 △2二飛
 ▲8六歩 △6二玉 (第2図)

 ▲6八角は一見すると危険なようだが、部分的にはこの形での有力手の一つ。△6五歩には▲9八玉と角筋を避けておく。
 ここで△6四銀ならば、先後は逆だが『注釈 康光戦記』P83~に載っている藤井-佐藤康戦(2002年8月6日・第50期王座戦挑戦者決定戦)のように激しい展開になることも考えられる。
第2図 本譜の△4三銀は堅実な一手だが、前述した藤井-佐藤康戦は先後逆のため△4三銀(▲6七銀)と上がった状態で振り飛車が手番を握っており、▲4六銀△4五歩▲1四歩以下先手の猛攻、後手の死守といった展開になった。
 △4三銀に▲8八銀と上がる手が入れば居飛車も一安心といったところだろう。△6六歩▲同銀と取り込むものの、後手から急に攻める手はなく△2二飛~△6二玉と自陣の整備に回った。
 第2図以下駒組みは進んで第3図。銀冠の堅陣に加えて攻め駒の働きも申し分なく、先手の模様が明らかに良いと思う。
第3図  第3図以下の指し手
       △3五歩 ▲5六金 △3四金
 ▲4四歩 △同 銀 ▲3五歩 △4五歩
 ▲7三角成△同 玉 ▲3四歩 (第4図)

 △3五歩と後手から動いて来たが、▲5六金が攻めに厚みを加える好手で△3六歩には▲4四歩~▲4五桂を用意している。△3四金にも▲4四歩が軽い突き出し。△同銀と取らせて▲3五歩と一転して強襲に出る。△同銀、△同金いずれも▲同角~▲4一飛成を実現すれば、駒損ながら玉形に差がありすぎるため先手良しとなる。
第4図 ▲3五歩に△4五歩は苦心の一手だが、▲7三角成△同玉▲3四歩と二枚替えを果たしてやはり先手良し。5六金、3七桂も使えそうで攻めが切れる心配はまったくと言っていいほどないだろう。後手の動きを完全に逆用した形となった。
 実戦もここから二十手ほどで先手の快勝に終わった。共に一勝三敗同士の深刻な対決を制して、小野八段は嬉しい二勝目。一方の泉七段は今期初戦こそ白星で飾ったものの、これで四連敗と苦しい星取りに。

 三日前に続いて後手藤井システムの将棋を見てきたわけであるが、やはり苦労しているという印象を受ける。一度は仕掛けたものの第2図のように自陣に手が戻る展開となっては後手も不本意ではないだろうか。玉砕覚悟で△6四銀と上がれば藤井システムとしても本望かもしれないが、おそらく以下の強襲は無理攻めなのであろう。
 第3図は一見すると右玉のような形だが、2二の飛車が働かず、3三銀・4三金も凝り形である。6筋の交換も完全に傷になってしまっており、作戦失敗と思わざるを得ない。
 後手藤井システムの苦悩。それを解消するには戦法の採用そのものをやめるしかないのでは、などと悲観的に感じてしまうのは筆者だけであろうか。
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コメント

藤井システムも

いつも楽しく拝見させていただいています。今回の後手藤井システムについてですが、私は先手番で上がっている銀が3二にあるのは振り飛車が得だと思います。振り飛車は飛車道が通っているのが大きい上、おまけに相手の飛車の走りにも備えています。ではどこがいけなかったのか。
私は4三銀が疑問で、やはり6四銀が良いと思います。先手番で藤井九段が負けた形をわざわざ4三銀と1手損して良いわけがありません。そこで、6四銀ですが、以下6五歩/9六歩/同歩/同香/9七歩/同香成/同桂の展開が考えられます。ここで藤井九段は9六歩(1四歩)と指しましたが、ここでは6五銀があるそうです。以下6六歩/9六歩/8六歩9七歩成/同玉/5四銀/8七玉/6五歩/9三香成。この変化は「注釈康光戦記」に載っています。この局面をどう見るかですが、先手番では4三銀(6七銀)の明らかな悪形。本譜は3二銀なので逆に振り飛車得です。佐藤棋聖の解説で先手番でも容易ではない形勢ということだったので、後手もやれるのではないでしょうか。少なくとも4三銀の展開よりはずっと勝ると思います。
私は三間飛車党で、四間飛車も指しますが藤井システムは指しません。ですが、藤井システムは何年も猛威を振るった戦法で、一時期ほとんどの穴熊党をミレニアムに移行させたほどの歴史があります。確かに藤井システムは最近勝率が悪いかもしれませんし、成立するかどうかも怪しいかもしれません。ですが、アンチ藤井システム派だからといって、藤井システムを使ったから負けた、というようなことは言えないと思います。ふつうの四間飛車にじっくりとした面白みがあるように、藤井システムにも将棋の醍醐味が詰まっています。6四銀のように、激しい変化を追究したわけでもなく、「無理」と決めつけるのはどうかと思います。
こんな失礼なことをいうのもこのブログをいつも楽しみにしているからです。藤井システムの場合だけ解説が淡白になるのだけは避けていただきたいと思います。

  • 2005/10/31(月) 21:00:56 |
  • URL |
  • 三間党 #SUtt14uc
  • [ 編集]

更新について

失礼なことを言った後に申し訳ありませんが、一度他のサイトでnusonoさんのブログについて「更新が多いのはよっぽど暇な学生か何か」と書かれているのを見ました。
それを気になさっているようでしたが、更新のペースが落ちるとすればとても残念です。毎日楽しみにしている方が多いからアクセス数が多いんだと思います。ぜひこれからもがんばってください。

  • 2005/10/31(月) 21:10:11 |
  • URL |
  • 三間党 #SUtt14uc
  • [ 編集]

やはり藤井システムの事となると気になるので書き込みます。私は藤井システムは最後まで攻めたおすというよりも穴熊を7八金・6七金型に限定させる(中村四段がよく用いますよね)だけでも十分役割を果たしているんじゃないかと思います。そこから普通に美濃囲いに組んで。藤井九段は納得しないと思いますが。

  • 2005/10/31(月) 22:28:51 |
  • URL |
  • 元藤井システム党 #-
  • [ 編集]

>三間党さん
力の入ったコメントありがとうございます。△6四銀の変化に関しては『注釈 康光戦記』の読み込みが足らず、上がった以上は猛攻を仕掛けるしかないと錯覚したため「強襲は無理」という表現になってしまったようです。言い訳じみているかもしれませんが、確かに▲9七同桂のタイミングで銀を引けば振り飛車も指せそうですね。
更新頻度は極力落とさないよう努力していきますので、今後もよろしくお願いします。

>元藤井システム党さん
穴熊の形を限定させる、という考え方は確かにその通りですね。裏を返すと藤井システムの猛攻を受けずには済んだものの7八金・6七金型に限定された居飛車側が、この形のまま玉を固めるにはどうすればいいか考えた結果「松尾流」が生まれたという側面も強いのでしょうし。

  • 2005/11/01(火) 04:47:20 |
  • URL |
  • nusono #EbFvTiSQ
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私の失礼な書き込みに快くお答えいただき、恐れ入ります。更新は大変楽しみにしていますが、プレッシャーをかけるつもりではありませんので、お好きなように進めてください。
最後にもう一度、失礼な書き込みをしたことをお詫びいたします。

  • 2005/11/01(火) 05:19:05 |
  • URL |
  • 三間党 #SUtt14uc
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