四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

勝率八割の恐怖

 14日に行なわれた第36期新人王戦・決勝三番勝負第二局の千葉-渡辺戦より。再び千葉五段の四間飛車対渡辺竜王の居飛車穴熊という戦形となったが、本局は▲6六銀型ではなく中飛車に振り直して5筋の歩を交換する作戦を振り飛車は採用した。

第1図 第1図は以前取り上げた千葉-島戦と似たような局面で、ここで島八段は8筋を突き捨てて△4二角~△6四銀という構想を見せたが、本局の渡辺竜王は△7二飛と回り7筋で一歩手に入れる順を選んだ。
 相手が一歩持ったのだからこちらも、とバランスを取る意味もあり有力な指し方と思う。以下先手は銀冠に、後手は松尾流に組み替えて第2図。居飛車からすぐに攻める手もなさそうだが、振り飛車の駒組みは飽和点に達しており、先手番ということもありここから積極的に動く。
第2図  第2図以下の指し手
 ▲5五歩 △同 歩 ▲同 飛 △5四歩
 ▲6五飛 △6四歩 ▲8五飛 △8四歩
 ▲8六飛 (第3図)

 一度切った歩を再度合わせるからには飛車を引くはずはない。▲6五飛と途中下車したのは△4二角と飛車に当てられる筋を消したもので、仮に第3図で△6四歩が突いていないとするとすぐに△4二角と引かれ、▲7五歩△同飛▲8四飛△7三桂くらいで次に△8五飛のぶつけがあり先手自信のない戦いだろう。
第3図  第3図以下の指し手
       △6五歩 ▲5三歩 △4五歩
 ▲同 桂 △4四角 ▲5七角 △7三桂
 (第4図)

 第3図で△7三桂も有力そうだが、次に角引きの含みもあり△6五歩が本筋か。▲5三歩は△4二角を甘くしつつと金作りを狙う手筋の一手で、△同金は利かされと見たか△4五歩▲同桂△4四角と進む。後手を引いて指しづらい感もあるが、次の△6六歩も厳しく本譜はそれを防いで▲5七角に、そこで△7三桂と跳ねて第4図。
第4図  第4図以下の指し手
 ▲7五歩 △同 飛 ▲5二歩成△8五歩
 ▲7六飛 △同 飛 ▲同 銀 △8八飛
 ▲6三飛 △8九飛成▲5三と (第5図)

 ここでは▲7七桂があったのではないか。△6六歩▲同銀△6五歩には▲7五銀で飛車が死ぬ。また△8五歩▲同桂△8四飛と強引に飛車交換を迫ってくれば、▲7三桂成で駒得できる。
 本譜の進行は7六の銀が中途半端な位置になるのがネックだ。以下先手は4三の金に狙いをつけて第5図を迎える。
第5図  第5図以下の指し手
       △4二歩 ▲4三と △同 歩
 ▲5三桂成△9九竜 ▲4五歩 △5五角
 ▲4六金打△6六角 (第6図)

 冷静に△4二歩と受けて、金を取られてもまだ金銀三枚の穴熊は堅い。△9九竜に▲4五歩は自玉の端をにらむ角を移動させようとする意図と思われるが、△5五角と逆先を取られて▲4六金打と使わされ、そこで△6六角と出られるようでは手の流れがおかしいように筆者には感じられる。
第6図 実戦は第6図以下、▲同角△同歩▲6四角に△1七香という華麗な決め手(渡辺明ブログ参照)が出て渡辺竜王の勝ち、二連勝となり新人王に輝いた。
 戻って▲4五歩のところで▲4三成桂はないのだろうか。△同金▲同竜の瞬間が怖いが、△2六香や△2六桂は▲4四竜でさすがに無理筋と思う。単に△6六角なら▲同角△同歩に前述の△1七香の筋を防いで▲3九金打とでも埋めておく。冴えない発想かもしれないが、4六に打たされるよりは働いた金打ちのように思えるのだが。

 本局も松尾流の堅さがいかんなく発揮された将棋。金気一枚取っても依然として維持されるその堅陣は、振り飛車党にとっては恐怖とも言える。組み上がる前に仕掛けるなりして、何としても阻むに越したことはなさそうだ。

 追記(19日):遅ればせながら囲碁・将棋ジャーナルの解説を見た。第5図から第6図に至るまでの▲4五歩が疑問、という意見は筆者と一致。代わりに▲5四成桂でどうかと述べられていたが、△2六香がありそれで先手が良くなるというわけでもなさそうだ。
 筆者の提示した二つの代替案はleifang_doaさんのご指摘通りうまくいかない。となるとこの将棋も第一局と同様、難しいところはあっても終始渡辺竜王がペースを握り、少なくとも千葉五段の方に形勢が傾いた局面はなかったという結論に現時点ではなりそうである。
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コメント

とても勉強になりました。

解説を見ていると千葉さんよりも強いのではと思ってしまいます。(笑)

良かったら教えて下さい。
45フで43成り桂の変化ですが同金同竜に4二香ならどうしたら良いのでしょうか?

それと39金を打つ変化なんですが金を持っていたら17香の筋は効かないのではないでしょうか?

  • 2005/10/17(月) 09:22:09 |
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  • ryo #-
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Re:とても勉強になりました。

「二手指し」の部分は消しておきました。
千葉先生より強いなんてとんでもない(笑)。人の将棋の方が指し手が見えるものです。持ち時間の切迫、勝ちへの意識から来るプレッシャーなどとは無縁で、マイペースで考えることができますので。
▲4三成桂△同金▲同竜△4二香には▲7三竜が自然ですが、王手飛車のラインに入るので△4五歩が嫌味ですね。▲3四竜も△3三歩がありますし、うまい竜の逃げ場所がない感じがします。

金を持っていれば△1七香▲同香△1九角▲1八玉△4九竜に▲3九金打がありますね。となると本譜のように▲4六金打と手放したのが結果的にはますます良くなかった、ということになるのでしょうか。
新人王戦の決勝は『将棋世界』にも掲載されるはずなので、とりあえずそちらでの詳しい解説を期待したいと思います。

  • 2005/10/18(火) 03:24:48 |
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  • nusono #EbFvTiSQ
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▲77桂は・・・

第4図で▲77桂があるのでは?ということですが、△85歩▲同桂△同桂▲同飛△55桂でダメだと思います。67の銀がいなくなると△76飛が生じるので、収拾がつかないと思います。
また▲43成桂は△51桂でダメだと思います。
否定ばかりで申し訳ありません。

  • 2005/10/18(火) 13:41:04 |
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  • leifang_doa #-
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Re:▲77桂は・・・

ご指摘ありがとうございます。両方とも先手がいけませんね。どうも桂馬のふんどしをかけられる手が見えない傾向にあるようです。

  • 2005/10/19(水) 03:11:59 |
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  • nusono #EbFvTiSQ
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いつも見させてもらってます。

43成り桂が利かないのはひどいですね。戻って63飛車では普通に51飛ではだめなのでしょうか?
本譜と同様に進めば43同歩に35歩、42歩の代わりに99竜なら43と同金24歩でまあそこそこの勝負になりそうですがいかがでしょうか?

  • 2005/10/19(水) 19:36:13 |
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Re: いつも見させてもらってます。

>ryoさん
確かに▲51飛~▲35歩の方が難しそうです。特に▲35歩は今すぐ▲34歩と出来るわけではないですが、穴熊戦に勝つ振飛車のコツのような感じです。
私的には▲51飛△89飛成▲53と△42歩▲43と△同歩▲35歩△99竜▲91竜(▲34歩は△35桂で攻め合い負け)が最善と思い、そこで居飛車の手が分かりません。振飛車にとっては本譜よりいいという見解です。

  • 2005/10/19(水) 22:17:17 |
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  • leifang_doa #-
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▲51飛もダメでした

ブログで竜王に直接聞いたら回答してくれました。▲51飛も穴熊勝ちとのこと。詳細は渡辺明ブログのコメント参照して下さい。

  • 2005/10/21(金) 03:24:42 |
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  • leifang_doa #-
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いつもどうもっす

竜王のブログ見ました。
それにしても丁寧に教えて下さってうれしいですね。
僕も35フをほめられたようでうれしかったです。
最終手26フの後の変化を確認してあれば教えて下さい。何度もごめんなさい。

  • 2005/10/23(日) 00:25:36 |
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  • 2007/10/09(火) 13:58:41 |
  • 囲碁の知識