浮き飛車は数年前まで筆者が愛用していた作戦で、対居飛穴にはほとんどこれ一本で戦っていた。第1図のような6六~7六と飛車を移動させるルートを阻止された形も実戦経験が豊富である。最近では有力な対策が生まれたためプロ間ではほとんど絶滅状態、筆者もめっきり指す機会がなくなったが、今またこうしてA級順位戦の大舞台で登場するとは驚きだ。
第1図以下の指し手
△2二銀 ▲6六銀 △4二金寄
▲8八角 △8二飛 ▲7六飛 (第2図)
△2二銀では次の▲8八角~▲7六飛を牽制して△8二飛がよくある手。本譜は▲6六銀だったが、▲8八角と引く手はありそうだ。
そこで△8二飛には▲7四歩が成立する。以下△8六歩▲7三歩成△8七歩成▲8二と△7八との取り合いは▲同銀と取ってと金が残るぶん先手が良い。手順中▲7三歩成に△8四飛とかわすのは▲6六角△8七歩成▲8四角△7八と▲6三とで△同金に▲6一飛が両取りとなる。
▲7三歩成に△8五飛なら▲6六角はないが、▲6三と△同金▲4一飛成△3一金▲7六竜で先手有利は明らか(参考1図)。▲6三とに△8七歩成も構わず▲7一飛成で良い。
▲7四歩を手抜いては後手が悪くなるので△同歩と取る。▲同飛に△8六歩は▲7一飛成が飛車金両取り。ここでも4一の金が浮いているのがたたっている。
△7三歩▲7六飛なら歩交換を果たしてとりあえず先手満足だが、△4五歩と動かれる手を警戒すべきだ。▲7七桂と角交換を拒否すれば△4六歩の取り込みが予想されるが、▲同飛が4一の金に当たるのが大きい(参考2図)。
もし手抜きが利くのであれば、△8六歩と突かれて▲同歩は△8七歩、▲同飛も△同飛▲同歩△8九飛で先手不利になるところだ。ただしこの金取りを後手が△3一金とでも受ければ次に今度こそ△8六歩が来る。それを防いで▲6八金くらいで一局の将棋だろうか。
戻って△4五歩には▲3三角成△同銀▲4五歩が良さそうだ。△8八角にはいったん▲7七角と合わせて△同角成▲同桂、再度の△8八角に▲7四歩△同歩▲4六角の反撃が厳しい(参考3図)。△9二飛なら▲7四飛、△7二飛には▲9一角成ではなく▲7三歩が好手となる。
▲8八角に△8二飛は後手うまくいかないようだ。代わりに△4二金寄と自陣を整備して、▲7六飛の瞬間に△4五歩と突くのはどうか。
対して▲7七桂は△4六歩▲同飛が金取りでないため、△7四歩と反撃して先手が悪くなる。ここでも▲3三角成が正解で、△同銀(△同金)に▲7四歩△同歩▲8三角でどうか(参考4図)。△7五歩に▲7二角成△7六歩と飛車を持ち合う変化も相当に思えるし、いったん▲7八飛と引く手もありそうだ。また▲7四歩~▲8三角を急がずじっと▲4五歩も有望で、いずれにしても先手も指せそうな将棋である。
おおまかな変化を調べてみたが、△2二銀に▲8八角も成立しそうである。本譜の▲6六銀は角筋を遮断して△4五歩の筋を警戒し、堅実に指そうという狙いだろうか。どうも重い形に見えるのだが…実際この後の展開で6六銀型をとがめる仕掛けが羽生四冠に出る。
▲6六銀△4二金寄▲8八角に△8二飛なら▲7四歩は△8六歩で、▲7三歩成△8七歩成▲8二と△7八との取り合いは角の逃げ場がない。△8七歩成にいったん▲7六飛と逃げるのも△8五飛で角取りが残ってしまう。よって単に▲7六飛と浮くのは仕方がない。
実戦は第2図から△8四飛▲9六歩△9四歩▲7七桂△3一金▲9七角と進んだ。第1図から△2二銀に▲8八角と引く手の研究が長くなってしまったため、以降の展開は明日改めて掲載する予定である。
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