
先月の記事でも述べた通り、実戦はここから△4五歩に▲2四歩△同歩▲6五歩と先手が仕掛けたわけであるが、やはりこれは成立しているようだ。少なくともこの後、後手が良くなる順は観戦記には記されていない。片上四段は▲6八銀をうっかりしていたらしく、「序盤からこんなにボロボロになっているなんて」とある。序盤の細かいミスで勝負が決まってしまう最近の将棋の恐ろしさが浮き彫りとなった格好だ。

ただし片上四段が△8四歩を早めに突いたのも理由があった。△5四銀を急ぐと▲8六角△6三金▲7五歩△同歩▲同角(参考1図)のように一歩切られてしまうのがシャクだ、と観戦記には述べられている。確かに▲3六歩~▲3五歩を見せられ、△5四銀が咎められそうな印象はある(筆者もこのように指され負けた経験がある)。

なるほど居飛穴らしい手順だが、筆者なら△6六歩に▲同金と取りそうだ。△6五桂▲同金△同銀には▲3三角成△同桂▲5五角が痛打となる(参考2図)。次に▲3三角成~▲4四桂の狙いが厳しい。また△6五桂を決めずに△2五歩のような手にも▲7五歩がある。駒損を避けて攻める変化が良さそうに見えるのは棋風のなせる技だろうか。
追記:窪田五段より義七郎武藏國日記にて「△6六歩▲同金には△8五桂で終わっている」とのご指摘。全くもってその通りである。読者諸兄に誤解を生じさせるかもしれないが、自戒の意を込めて以前の記事を残したままでの改訂とさせて頂く。
「△6六歩を▲同金と取りそう」な筆者は間違っても対振り飛車に居飛穴は指すべきではないようだ。あるいは振り飛車側を良くしようとする本能のなせる技だろうか。
気になる点がいくつかあり、まとめて書いていると長くなりそうである。よって仕掛け以降の詳報は後日改めてお伝えしたい。
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