四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

四間飛車穴熊対棒銀の一変化における素朴な疑問

 一年以上も更新を怠ってしまっていた。読者諸兄におきましては、お久しぶりであると言う他ない。
 近況であるが、実戦からはめっきり遠ざかったものの、気が向いた時くらいは棋書にいちおう目を通してはいる。
 ただし角道を止めるノーマル四間飛車がすたれた影響で、定跡書よりも自戦記などの読み物を好むようになってしまっているのが現状である。

 そんな中、広瀬王位著『四間飛車穴熊の急所』は、圧倒的に美濃囲いの採用率が高い筆者にとっても大変興味深い一冊であった。
 同著で取り上げられているのは「急戦編」と「銀冠編」であり、肝心と思える相穴熊などに関しては「続編で取り上げる」と明記されている。今から非常に楽しみである。

 四間飛車は四間飛車でも穴熊であるから、美濃党かつ実戦感覚から遠ざかっている筆者としては、明快な手順で「振り飛車よし」「振り飛車ペース」「いい勝負」などという結論に対して、いちいちなるほど、と感心するのが精一杯である。
 しかし対棒銀だけは、対四間美濃とはいえ棒銀好きの血が騒いだのか、そもそも自分は対四間穴には角田流なのだがなどと思いつつ、一つだけ心の中でひっかかる変化があった。
 それは今から十年以上前の、二十世紀の記憶であった。必死にその糸をたぐりよせ、保管してある将棋部部内誌のバックナンバーをめくる。
 そしてついに発見した。それが第1図の局面である。
 ただし筆者の実戦ではない。先輩の一人が、大学時代のリーグ戦(団体戦)で他大の方と指した一局である。1998年だからまぎれもなく二十世紀だ。
 しかし局面そのものは、『四間飛車穴熊の急所』P68第6図から後手が△4二金と上がったものとまったく同一である。十年以上の時を経て、世紀を超えて、寸分たがわぬ盤面が出現する。温故知新、将棋の奥深さを改めて実感した気分だ。
 同著では第1図以下▲4五歩の仕掛けに対して△3三金と上がり、十数ページもの項を費やして双方最善を尽くせば「いい勝負」「穴熊が堅いので実戦的には後手が勝ちやすいと思う」と述べられている。その詳細は筆者の専門分野ではないこと、また王位に敬意を表してここでは割愛、同著をご覧頂きたい。
 だが、尊敬する先輩の一人である先手は、本では一言も述べられていない手順で居飛車良しとしてしまった。

第1図 第1図以下の指し手
 ▲1五銀 △3三金 ▲2四歩 △同 歩
 ▲2八飛 △4五歩 ▲同 歩 △3五歩
 ▲4四歩 △同 金 ▲2四銀 (第2図)

 第1図で▲1五銀は、対美濃棒銀にもしばしば出現する筋である。これに対して△1四歩は構わず▲2四歩でまずい。次の▲2三歩成を防ぐ必要があり、銀を取っている暇がないのであれば何のために端を突いたのか分からない。
 △3三金は『四間飛車穴熊の急所』にも出てくる手で妥当な受けと思うが、2筋を突き捨てて▲2八飛がいかにも好調。第2図
 以下振り飛車はさばこうとするも、▲4四歩で角交換の狙いを事前に阻止したのがうまく、▲2四銀と進出に成功し、2筋突破が確約された第2図は居飛車成功であろう。以下の棋譜は筆者の手元に残されていないが、結果は先手勝ち。

 穴熊側としてはどこで変化すればいいのだろうか。▲1五銀に開き直って△3五歩と取り、▲2四歩△同歩▲同銀に△3四飛は考えられそうだ。▲2三銀不成なら△2四飛▲2二銀成(不成)に△2九飛成でさばけた上に二枚替えとなりそうでうまいが、冷静に▲3五銀で押さえ込まれダメか。変化1図
 そもそも先輩は第1図まで遡り、「△4二金に替えて△1四歩としても、▲4五歩△同歩▲2二角成△同飛▲3四歩(『四間飛車穴熊の急所』P69A図の類似形に今度は合流した。同著では「簡単に先手よし」。本手順では金が4一のためさらに居飛車の条件が良い)△3二飛▲6六角△4四角▲同角△同銀▲6五角(変化1図)で良いと思う。つまり、振り穴側は手が間に合わない訳である。」と一刀両断。
「加藤一二三先生ではないが、僕も言いたい。『何故、棒銀を(対四間穴に)指さないのですか?』と。」自戦記の締めくくりの言葉も見事である。

 いかに実戦から遠ざかっているとはいえ、段の実力くらいは保持してしかるべき筆者が疲れた頭で少し考えても、この一連の手順における居飛車棒銀良し、をくつがえすのは容易なことではないと思う。
 それならばなぜ『四間飛車穴熊の急所』で触れられていないのだろうか。本格的な一冊であり、内容も基本から高度な定跡まで一通り網羅されていると思われるというのに。
 最新定跡にめっきり弱く、また四間飛車穴熊は専門外ということもあり、筆者にはさっぱり分かりかねる。何か振り穴側に決定版とも言える対策でもあるのだろうか。一年以上ものブランクを経ての更新早々で恐縮であるが、もしご覧頂いた読者の中でご意見及び知識のある方がおられれば、是非ご教授願いたいものである。
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