四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

3年ぶりの逆襲、4年ぶりの更新

 ブログの更新がおよそ4年ぶり、という事実に一番驚いているのは他ならぬ筆者かもしれない(小賢しい生存報告、などはカウントしたくない所存である。お見苦しいところを露呈してしまい申し訳ない)。
 ノーマル四間飛車が廃れてはや数年、『よくわかる』シリーズのような級位者向けの内容のものを除けば、『四間飛車激減の理由』を最後に、3年ほど角道を止める四間飛車に関する定跡書は上梓されていなかった。
 同書は「藤井システムなどの対策が整備された居飛車穴熊に対して勝ちづらいため、(角交換型や穴熊はともかく)通常の四間飛車はプロの実戦であまり登場しなくなった」という趣旨のもと、300ページ近い分量のすべてを対四間飛車の居飛車穴熊に費やしたものとなっている。必ずしも居飛車有利の手順ばかりを紹介しているわけではないため、読んでいて不公平感のようなものは感じなかったが、最終的には居飛車穴熊が良くなる変化に帰結するよう終始しており、もともと筆者が用いることの少なくなっていた後手四間飛車を完全に封印する決め手となるには充分な内容であった。
 それでも先手四間飛車は採用せざるを得ず、「対松尾流の変化の時に美濃囲いの端歩(▲1六歩)が突いてある」「一手早いため銀冠に組めることが多い」などの細かい違いを利用して孤軍奮闘(?)してきたわけだが、ここにきて心強い味方が現れた。
 8月18日に発売された『四間飛車の逆襲』である。著者は新進気鋭の石井健太郎四段、「四間飛車を愛用しており、この戦法のおかげで三段リーグを抜けることができた」とまえがきで語る頼もしい存在である。発売日に購入し、熟読させて頂いた。
 『四間飛車激減の理由』と同じく、一冊まるごと対居飛車穴熊の手順を紹介したものとなっている。ここ2・3年ほどの定跡書(立ち読みがほとんどであるが、いちおう3冊ほど所持している)は次の一手や実戦編などを盛り込み、良く言えばバラエティに富んだ内容、悪く言えば中身を薄めたものが多いが、本書は実戦解説に40ページ弱を割くに留まっており、ボリューム的にも不足は感じない。実力向上に向けたアマチュアへのアドバイスや自身の取り組みなどを描いたコラムからも真摯な人柄が見て取れ、筆者としては好感を抱いた。
 特徴的なのは主に先手四間飛車を題材としている点であり、後手四間飛車は△5四銀型と△3二銀型のみの紹介となっている。「△4四銀型は、先手四間飛車の▲6六銀型に比べて純粋に一手損しており、後手番の良さを生かすことが難しいからである」と理由も添えられており、先手限定で四間飛車を使い続けてきた筆者としては、自身の愚考に裏付けが取れた形となり嬉しい限りだ。
 留意すべきは「途中まで先手藤井システムの駒組みを進めた上で▲6六銀型に組む」と序章で述べられているところだろう。藤井システムを見せることによって、居飛車穴熊側の2枚の金を3二と4三に固定できるメリットがあり、なおかつ1筋は詰めた(▲1五歩型)状態のみの手順の解説となっていることにも気をつけられたい。
 藤井システムを採用しない筆者のような四間飛車党にとっては、居飛車の金は必ずしも3二とは限らない(3一の場合もある)、常に1筋を突き越しているとは限らない(▲1六歩に△1四歩と受けているか、単に▲1六歩の状態で端攻めが難しい)という二点に注意して読み進める必要がある。特に本著第1章の対△8四角型で最初に登場する変化1では、3二金型でなら確かに成立するが3一金型だと微妙と思われる手順について言及されており、そのまま鵜呑みにするのではなく形の違いに気を配った上で手順を吟味しなければいけないだろう。
 以上のような理由もあり、この一冊のみを読破すれば居飛車穴熊に対抗できる、などとは無論のこと言えない。予め紹介した『四間飛車激減の理由』の他に、少なくとも『鈴木大介の将棋 四間飛車編』あたりには目を通しておく必要があるだろう。
 筆者が更新を滞らせている間に、当ブログをご覧頂いている振り飛車党の読者諸兄にも「角交換四間飛車や石田流、ゴキゲン中飛車がメイン」という方が増加したことは想像に難くない。若年層に至っては「そもそも角道を止める振り飛車に馴染みがない」場合も大いに考えられるだろう。
 こうした通常の振り飛車でも「居飛車穴熊対策さえ立てることができれば、まだまだ充分に戦える」と個人的には思う次第である。たまには原点に帰って角道を止めて飛車を振り、本著を引っ下げて堅陣を切り崩そうとしてみるのも悪くはないのではないだろうか。その結果「やはり居飛穴は手強い」「その穴熊に組まれづらい戦法は優秀だ」と再度認識する結果となったとしても、振り飛車党にとっては収穫があったと言えるだろう。
 ただし従来の振り飛車を採用する場合、居飛車穴熊のみならず急戦・左美濃・位取りなどといった居飛車の様々な作戦に幅広く対応する必要がある。特に四間飛車に対する作戦は多様を極めているため、居飛車穴熊と決め打ちしていたら棒銀などの見慣れぬ形に誘導され、定跡が分からず惨敗したなどという顛末にならぬよう用心するべきなのは言うまでもない。

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右玉に関する言及箇所だけでも買い?~定跡書のような、実戦集のような~

 2011年に入ってから、いやここ2・3年、四間飛車(穴熊はともかくとして)に関する棋書がまったくと言って良いほど上梓されず、筆者にも何となくフラストレーションのようなものが蓄積されている感は否めない。
 角交換型や石田流、ゴキゲン中飛車が振り飛車の主体となった現状では仕方のないことなのだが……と半ば諦めていたら、思わぬところから伏兵が現れた。
 先月発売された『南の右玉』である。
 そもそも右玉を題材としているという点だけでも希少価値が高い。早速書店にて購入、拝読させて頂いた。
 あらかじめお断りしておくが、本書は全編が右玉を題材としているわけではない。右玉に対する速攻を意識しての袖飛車に続き、後半は陽動に類する振り飛車が主体となる。
 また、いわゆる「定跡書」とは一線を画しており、著者の実戦をもとに、序~中盤(ないしは終盤の入り口あたり)までを解説したものとなっている。こう述べると「実戦集」のような印象を受けるが、こういった棋書にありがちな「巻末に対局相手及び棋譜の掲載」という形式も取っておらず、寡黙で「地蔵流」と称される南九段の人柄をあたかも具現化したかのように、何やらつかみどころがない。
 「定跡書」ではないが「実戦集」でもない。どっちつかず、中途半端な印象を受けるかもしれない。そもそもタイトルに「右玉」とあるのに、肝心の当該戦法に関する記述は全体の半分以下である。どことなく肩透かし、期待外れといった印象を受けるかもしれないが、筆者の感想は違った。
 そもそも「右玉」という戦法自体、振り飛車感覚をそのまま発揮できる居飛車の戦法・振り飛車党からの転向を試す場合に居飛車の感覚を取り入れるための試金石・あくまで純粋に振り飛車へこだわる指し手にとっては変化球的な戦法のストック、といった意味合いがある。この点を踏まえれば、本著が後半に「振り飛車」へ関する記載へとつながるのはしごく当然の流れとも言える。
 この一冊のみでは、右玉に関する知識は不足(『とっておきの右玉』どころか、絶版の『右玉伝説』まで遡って補完する必要があるだろう)。さりとて振り飛車に関する箇所も、流行形はおろか今やすっかり廃れてしまった角道を止める四間飛車のような戦法にも、そのまま即座に応用することは難しい。
 だが、拙ブログの内容についてきて頂いたレベルの読者の方々なら、既存の棋書から得た知識ないし実戦経験を踏襲して、新たに南流の感覚(△2七桂や△2八銀と打って桂香を拾いにいき相手を焦らせる一方、攻め合いを急ぐ場合は9筋の突き越しを利用して△9三~△8五桂と跳ねる筋もいとわない、緩急自在のもの)を取り入れることは充分に可能かと思われる。もしこれが実現さえすれば、文字通り一冊で二冊かそれ以上の価値を、この著書は持つこととなるだろう。
 最新定跡に精通した若手やタイトルホルダー、ある戦法におけるスペシャリストなどの棋士による出版が大半を占める中、五十路が近づいた南九段による今回の一冊。いかにも玄人好みであり、読み手を選ぶきらいはあるが、「右玉に関する知識を少しでも得たい」「力戦と称しながら結局は手順が体系化されるのに飽きたらず、本当の力勝負での振り飛車を貫きたい」こういった嗜好を持つ方には強くおすすめできると言えよう。



内容もサイズも重厚な一冊

 このブログを何度もご覧になっている皆さんはお分かりかと思うが、筆者は終盤力にやや欠けているきらいがある。
 受け潰す方向に持っていけば自分のペースなのだが、攻め合いになるととたんに自信がなくなる。ましてや一手勝ちみたいな展開にはとことん向いていない。
 そんな筆者も少しは終盤力をつけようと思い、何かよい本はないかと思ったところぴったりの一冊が見つかった。『プロの手筋 詰めと必死(受けなし)400―プロの実戦から学ぶ寄せの手筋400題』である。
 出版社は木本書店。なじみの薄い読者の方もおられるだろうが、『四間飛車のバイブル』『相振り飛車の正体』などの「正体」シリーズ(いずれもプロの実戦集)など、数年に一冊ペースで棋書を発行している。
 さて本著だが、タイトル通りプロの実戦で実際にあらわれた局面から、即詰みの手順と必死をかける局面が合計で400題出題されている。まだ筆者は20問ほどしか解いていないが、とにかく難解で読み応えのある一冊である。
 値段は2940円とやや高めだが、ハードカバーで従来の棋書よりも若干サイズが大きめなのと、ページ数が400を超えることを考えれば妥当なところではないだろうか。それになにより問題図の下にチャックシートが用意されており、自力で正解手順を見つけられたかどうかをチェックできるなどの配慮もなされている。即詰み手順の変化もできる限り詳しく書かれており、非常に勉強になる。
 このブログの内容についていって下さっている方々は有段者クラスだと思われるので、終盤力を鍛えるにはうってつけの一冊である。なかなか普通の書店にはおいてないと思われるので、この機会にぜひご購入頂きたい。

激しい変化にはとても踏み込めない

 ただでさえノーマル四間飛車が激減しているというのに、そして対四間飛車には居飛穴が定番になっているというのに、『新・東大将棋ブックス 定跡道場 先手四間VS左6四銀』が発売。興味深いので購入。
 ほとんどが後手4一金型の解説がなされている。個人的には舟囲いは4二金直と上がらない方が固いと思っているので、筆者はぎりぎりまで▲6七銀を保留して△4二金直を待つ。
 内容の方は第1章、8筋突き捨て型対振り飛車が単に▲6五歩の激しい戦いにかなりのページ数が割かれている。『東大将棋』シリーズはやや居飛車びいきの感が強いのだが、本著では振り飛車が最善を尽くせば居飛車が難しいとなっている。しかし詰みまで研究されている変化と、それを巡る渋い攻防が濃密に描かれており、読んでいて頭がくらくらしてきた。筆者はとても指しこなせそうにない。
 第2章は私好みの8筋突き捨て型対▲7四歩を打つ「新・鷺宮定跡」。9九香型でも互角に戦える、とのこと。ただし振り飛車の飛車は取られるのがネックか。
 第3章は8筋突き捨て型対▲7三歩。これは△同飛と取り、9九香型がたたるようだ。ただし9八香型なら振り飛車有望そうだ。これは使える。覚えておこう。
 第4章~6章は振り飛車・居飛車双方指す気が起きない手順なので省略。
 第7章はいわゆる「亜急戦」(「準急戦」)。本著ではけっこう居飛車有望と書かれているが、他の定跡書と照らし合わせてみると疑問の残る点がいくつかある。これは明日以降ブログで詳しく取り上げる。
 第8章は△4二金直と▲9八香の交換が入った筆者好みの形。簡単に触れられており居飛車不満となっているが、一箇所突っ込みどころがあるのでこれもブログで詳しく紹介する予定。

 全体としては内容も充実しており楽しめた一冊。ノーマル四間飛車党にとってはおすすめである。個人的には是非次は7八銀型対7二飛の鷺宮定跡を上梓して欲しいものだ。

どちらかというと筆者は対策の方を知りたいのだが……。

 『角交換振り飛車 基礎編』及び『角交換振り飛車 応用編』読了。しかしこの二冊を読んだ筆者の目的は、自分で角交換振り飛車を指すためではなく、その対策を知りたかったのだが……本著はかなり振り飛車びいきの変化が多く、あまり参考にならなかった。
 筆者が角交換振り飛車を指さない理由はいくつかあるが、『角交換振り飛車 基礎編』の「まえがき」より抜粋すると、
 その一。まず、居飛車からの急戦を心配する必要がない。棒銀とか山田定跡は覚える必要がない。
 →筆者の場合。急戦定跡はだいたい網羅してるつもりなので別に構わない。
 その三。振り飛車から攻めることができる。角交換振り飛車は受けの戦法ではなく、攻めの戦法なのだ。これが従来の振り飛車とは一番違う点である。
 →筆者の場合。受けの棋風なので自分から動く将棋は好まない。故に角交換振り飛車に魅力を感じない。
 その四。居飛車穴熊対策が完備されている。振り飛車から急戦を見せているので、居飛車は穴熊に囲いづらいし、居飛車穴熊に組ませても、攻め筋がたくさんある。
 →筆者の場合。別に居飛車穴熊に組まれても構わないと思って四間飛車や右玉を指している。

 とはいえ、振り飛車党としてためになる手筋も多く、それなりに勉強になった二冊だった(余談ながら、『角交換振り飛車 基礎編』P162に先日紹介した相穴熊の将棋「戦型:相露出狂?」の類似形が載っているのには参った。我ながら序盤のセンスがない)。現代振り飛車の流行形を追いかける者としては、読んでおいて損のない二冊と言えよう。

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