社団戦初日、4局目の将棋より。
お相手が年配の方だったので「居飛穴はない」と決め打ちをして後手四間飛車を採用したところ、その読みは的中したが山田定跡を採用されて大いに動揺する。しかも端角の動きは▲9七角~▲7九角ではなく、途中で▲8六角と途中下車する古いタイプだ。もちろん細かい定跡など覚えていない。

ただし居飛車側が仕掛けを見送ったため、持久戦模様となって迎えた第1図は振り飛車が充分に指せそうである。桂交換を果たし、先に馬を作った上に相手は歩切れ、玉の堅さも違う。
おまけに手番も握っているこの局面で、筆者がどう指したかをお考えいただきたい。
もちろん最善手とは限らないが、2017年の社団戦で印象に残っている着手の一つだ。気楽な気持ちでお考えいただければ幸いである。解答は続きを読むをクリックしてご覧ください。
【“2017年度社団戦記 その4 (3局目)今回は次の一手形式で”の続きを読む】
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筆者の実戦より。先手四間飛車対後手のナナメ棒銀となり第1図。後手は△4二金直の代わりに△9四歩と突いた形になっている。このことが戦局にどう影響するだろうか。

第1図以下の指し手
△7六歩 ▲同 銀 △7五歩
▲6七銀 △7三銀引▲7六歩 △7四銀
▲6八角 △7六歩 ▲同 銀 △8六歩
▲同 歩 △6六角 (第2図)
△7六歩▲同銀△7五歩▲6七銀に△7三銀引のいわゆる亜急戦(準急戦)で来た。▲7六歩と即座に反発するが、△7四銀に従来の定跡通り▲9五角と出られない。そこで本譜は▲6八角。△7二飛なら▲4五歩の予定だったが、後手は定跡通り攻めてきて第2図。△6六角では△7五歩が普通だが……。

第2図以下の指し手
▲7五歩 △7七歩 ▲8八飛 △7五銀
▲同 銀 △同 角 ▲7七角 △3三桂
▲7八飛 △7六歩 ▲5九角 △6九銀
▲7六飛 △5八銀成▲同 金 △7四歩
(第3図)
▲7五歩は疑問。
『新・振り飛車党宣言! 1 最先端の四間飛車』
P32にある通り▲6七銀と引き、△7七歩▲同桂△2二角▲8五桂とさばいて振り飛車良しだった。これを逃して本譜は苦戦に。しかし▲7七角に△3三桂の形が薄い。

▲7八飛は割り打ち覚悟の一着。金をはがされて△7四歩と受けられ苦しいようだが……。
第3図以下の指し手
▲3六歩 △5三角 ▲5五歩 △7五歩
▲5四歩 △7六歩 ▲5三歩成△同 銀
▲3五歩 (第4図)
▲3六歩が遅そうに見えて桂頭の弱点を突く一手。△5三角と手順に防がれたが、▲5五歩と急所を狙う。ここで△7五歩はおそらく疑問だろう。強く飛車角交換を挑み、▲3五歩が入った第4図は勝負形となった。

実戦は以下△5七歩▲4七金△6九飛▲2六角△4四銀▲3四歩△2五桂▲5九歩と進み、そこで△8六飛と活用したのがおそらく悪手。▲7五角が痛打で、△8九飛上成▲3三銀△同銀▲同歩成△同玉▲3四歩△同玉▲2二銀と縛って、相手の受け間違いもあり何とか勝ち。
4一金型をとがめた玉頭攻めが功を奏した一局となったが、格下(初段)相手の急戦に対して苦戦を強いられるようではまだまだ甘い。最近居飛穴の相手ばかりしていて急戦の定跡を忘れている。大いに反省。
筆者の実戦より。早速だが第1図を見て頂きたい。これだけで戦型が分かる方はかなりの定跡通である。そう、青野九段の開発した「新鷺宮定跡」だ(詳細は
『四間飛車の急所3 急戦大全(下)』
P35~38を参照して頂きたい)。同著にはこの変化は以下△8九馬▲8七銀で振り飛車が指せる、と結論づけられている。ただし本局は四間飛車側が先手のため、▲4六歩の一手が入っている。これが戦局に大きな影響を及ぼすことになろうとは、この時はまだ思いもしていなかった。

第1図以下の指し手
△7四歩 ▲7一角成△同 銀
▲7四歩 △4六馬 ▲7三歩成△同 馬
▲6四歩 △同 歩 ▲6五歩 △7九角
(第2図)
新鷺宮定跡とは昔よく戦ったものだが、△7四歩ははじめて指された。▲同歩は△同飛▲7五歩(▲6七金は△7六飛▲同金△6七銀)△8四飛▲9一角成△8六飛で自信がなかったので▲7一角成△同銀と飛車を取ってみたはいいものの、▲7四歩に△4六馬と歩を補充されてしまい4六歩型が裏目に出る形に。

▲7四歩では▲8四(8三)飛も考えたのだが、△7五歩▲8一飛成△7六歩▲7一竜△7七歩成▲同竜△4六馬(参考1図)の一直線の変化は自信なし。△3六桂を許すわけにはいかないが、▲4七銀打と手放すようでは戦力不足かつ後の端攻めが不安、▲4七金では△6八馬に▲同竜の一手となり一時的に竜が隠居してしまう。
さりとて△7五歩に▲6七銀は△4六馬▲8一飛成△8二馬で竜を殺されてしまい、結局6八の飛車がさばけない。これも自信なし。
よって本譜の変化を選んだのだが、▲7三歩成と成り捨てる感触が悪い。

▲6四歩△同歩▲6五歩と筋っぽく継ぎ歩攻めをしてみたものの、△7九角と打たれ第2図。ここで間違えてしまった。
第2図以下の指し手
▲6四歩 △6八角成▲同 金 △8八飛
▲6三歩成△同 馬 ▲6九歩 △9八飛成
▲1五歩 △4四香 (第3図)
▲6四歩では▲6七飛と逃げるべきだった。本譜は△8八飛に▲6三歩成△同馬▲6九歩と拠点の歩を成り捨てる苦心の受けをしたものの、△9八飛成と先に駒損する展開に。

▲1五歩は飛車を手持ちにした時の振り飛車の常套手段だが、△4四香と打たれて第3図。ここで▲4七歩と受ければいいものを、▲5九金と変な受け方をしてしまい、以下△8八歩成▲1四歩△1八歩▲同香△7八と▲1三歩成△同桂▲同香成△6八とに▲2二飛が利かない(△4一玉なら▲2一飛成で△3一金と使わせることができるが、△3一玉ときわどく逃げられる)のが誤算。結局敗戦となった。
相手は五段。うーんさすが、定跡形からうまい手を探すものだと感心してる場合ではない。とりあえず研究タイム。

第1図に戻って△7四歩に▲同歩と取り、△同飛▲7五歩△8四飛▲9一角成△8六飛に▲6七銀(参考2図)ならどうか。△4六馬なら▲同馬△同飛▲4七歩△8六飛に▲9五角がある。△8二飛と引くよりないが▲8五香△7二飛にじっと▲7六銀(▲8三香成を急ぐと△7五飛でおかしなことになる)。これか?これが決定版か?
しかし参考2図で△6七同馬▲同飛△8八歩成、あるいは△7六歩!▲5六銀△7七歩成などという乱暴な手順も成立しそうだ。
とすれば本譜の手順は正解だったのか……?実戦中は何か違う、と違和感を抱きつつ指していたので心理的に動揺してしまい、結果的に悪手を重ねることになってしまった。やはり対局中は自分の手に自信を持つべきである。反省。久しぶりに研究意欲をそそられる将棋だったが、それにしても手はあるものだなあ……。
とはいえ例によって将棋倶楽部24のフリー対局の話なんですけどね。筆者の先手四間飛車対後手鷺宮定跡となり第1図、昔研究していた形である。ただしその後発売された
『仕掛け大全 四間飛車編』
P224では居飛車充分という見解が述べられている。それでもあえてこの変化に踏み込んだのだが、実戦は意外な方向に進行していく。

第1図以下の指し手
△4四歩 ▲6六角 △6四歩
▲同 歩 △同 銀 ▲4五歩 △5五歩
▲6五歩 (第2図)
第1図から△7七角成▲同銀に△7九角、または△8二飛は実戦経験があるのだが、ここで角道を止められる手は初めて指された。混乱した筆者は▲6六角。諸事情により時間に追われていたため、△8二飛なら▲7七角で千日手でもいいかと思っていた。しかし後手は△6四歩と打開。以下の進行はほぼ必然と思われるが、おそらく第2図の▲6五歩を相手は見落としていた。

第2図以下の指し手
△7三銀引▲5五角 △4五歩
▲6四歩 △5五角 ▲同 歩 △2二玉
▲6三角 △8二飛 ▲4五角成△8八角
(第3図)
△6五同銀と取るのは▲5五角で後手は収拾がつかない。よって△7三銀引だが、やはり▲5五角が実現した。△4五歩に▲6四歩が気持ちの良い突き出し。△5五角▲同歩に△2二玉と王手飛車の筋を避けるも、露骨に▲6三角と打ち込み馬を作って先手良しのはずだが……。

第3図以下の指し手
▲9八香 △6六歩 ▲7七銀 △9九角成
▲6六飛 △9八馬 ▲6三歩成△同 銀
▲同 馬 △同 金 ▲同飛成 △8九馬
(第4図)
筋っぽく▲9八香と指したがこれが悪手。△6六歩と打たれて攻めが遅くなってしまった。第3図では単に▲6三歩成が正解だった。本譜も▲7七銀△9九角成▲6六飛△9八馬に▲6三歩成を実現させるも、清算して△8九馬と開き直られてしまった。

第3図以下単に▲6三歩成なら清算した後取られる駒は香車だけで済む。第4図は金銀と角桂香の交換となり決して駒得とは言えない。おまけに意外と後手玉は耐久力がある。
実戦は以下▲4四歩と垂らしてみたものの、△4二歩▲6一竜△5一歩と受けられてしまった。その後も筆者は悪手を連発したものの、相手も馬を切ったり飛車を切ったりしてあわてて攻めてきたため形勢は混沌となり、そして運命の第5図を迎える。

△3八銀打は実は詰めろになっていない。その上後手玉には▲3四桂△3二玉▲3三銀△同玉▲2二角以下の即詰みが生じている。△3四玉には▲3五金(これが見えていなかった)△同玉▲3六飛、△3二玉と引いても▲3一金以下ばらして▲5一竜ないしは▲3三金でも詰む。
対局中▲3三銀の筋は読んだのだが……実戦は▲3四桂△3二玉と自玉をわざわざ詰めろにしてから▲3六銀と受けたため、△3五桂で受けの利かない形となってしまった。
せっかく五段相手に中盤優勢となり、しかも最後は敵玉の詰みを逃すという二重の意味で悔いの残る一局となってしまった。猛省。
筆者の実戦より。私の先手四間飛車に対して後手は△6五歩早仕掛けを用いてきた。そして迎えた第1図、ここからの進行をご覧頂きたい。

第1図以下の指し手
▲5五歩 △同 角 ▲6七飛 △6六歩
▲5七飛 △8六飛 ▲4五桂 △6五桂
(第2図)
第1図は
『四間飛車を指しこなす本〈1〉』
P97第83問解答図と同一。3七桂型を活かして5筋の歩を切っておくのがポイント。▲6七飛に△6六歩を決めてから△8六飛と走ってきた。▲4五桂に△6五桂が飛車に当たるので厳しそうだが……。

第2図以下の指し手
▲5五飛 △7七桂成▲5三桂成△同 銀
▲6五飛 △5五桂 ▲4八金引△4四桂
▲4五銀 (第3図)
このタイミングで▲5五飛と角を取るのが前々からの読み筋。△同歩なら▲5三桂成~▲6五桂とボコボコ攻める。本譜は△7七桂成だがここでも強気に▲5三桂成。△5五歩なら▲5二成桂△同金▲6四角ぐらいか。本譜は△同銀と応じたためここで▲6五飛と逃げ、先手の主張は全て通った形となった。△4四桂に▲4五銀とがっちり受けた第3図はさすがに先手優勢だろう。

ただし実戦は最後に3連続悪手を指して恥ずかしいトン死を喰らったことを付け加えておく。
『新・東大将棋ブックス 定跡道場 先手四間VS早仕掛け』
では居飛車の金が4一金型しか紹介されていない(買っていないのでもし掲載されていたら失礼)が、△4二金直と▲3七桂の交換が入った形ではやはり四間飛車の方が指しやすい変化に持ち込めることが多いようである。