四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

△3二飛型からの攻防

 C級2組順位戦の中村亮-矢倉戦より。四間飛車対居飛車穴熊の定跡形となり第1図、『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』P128のテーマ18図を先後逆にして、▲1五歩を入れた形となっている。ここからどのような進行を見せるか。

第1図  第1図以下の指し手
       △3二飛 ▲6六角 △5一角
 ▲2六歩 △3五歩 ▲同 歩 △同 飛
 ▲2七銀 △3二飛 ▲3八金 △8二飛
 ▲8八飛

 △3二飛は『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』P132に載っている一手。対する▲6六角に7三ではなく5一に角を引いて本の手順を離れた。以下居飛車は3筋の歩を交換し、振り飛車は銀冠に組み替える。△8二飛に▲8八飛と受けた第2図は互角の形勢だろう。
第2図 第2図以下△7三桂▲4八銀△6五桂▲8六歩…と進み熱戦が展開されたものの、結果は先手の勝ちとなった。中村亮四段はこれで五勝四敗となり白星先行。敗れた矢倉六段は痛恨の三敗目を喫し、昇級戦線から脱落する結果となってしまった。

 第1図から△7三桂ではなく△3二飛と指す相手も多い。その場合の戦い方が今一つ分からなかったのだが、こうしてプロの実戦を見ることができ個人的には参考になった一局。

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課題の局面、再び現る

 1月17日に行なわれたC級2組順位戦第9回戦では四間飛車の将棋が続出した。順を追って何局か取り上げてみたい。まずは山本-川上戦から。居飛車穴熊対四間飛車の定跡形となり第1図、前日の羽生-久保戦、NHK杯戦の深浦-川上戦とまったくの同一局面となった。『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』には載っていないが明らかにプロ間での最前線と思われるこの形から、本局はどのような展開を見せるのであろうか。

第1図  第1図以下の指し手
       △8三玉 ▲2九飛 △1二香
 ▲2八飛 △8五歩 ▲7七金 △6五歩
 ▲7五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 歩
 ▲3五歩 (第2図)

 △8三玉は手待ちをするにしても真新しい指し方。以下先手も飛車を上下移動させ仕掛けの時期を待つ。▲7七金に筆者推奨の△6五歩がお目見えし、その瞬間に先手は▲7五歩~▲2四歩~▲3五歩と攻めかかった。後手はどのように対処するのか。
第2図  第2図以下の指し手
       △3五同歩▲同 角 △3六歩
 ▲3四歩 △4四角 ▲同 角 △同 飛
 ▲2四飛 △3五角 ▲2一飛成△5七角成
 ▲3三歩成(第3図)

 △3五同歩は通常では成立しない手と思われるが、この場合は▲3四歩に△4四角とぶつけ、▲同角△同飛▲2四飛に△3五角の飛車銀両取りがあった。無論先手もこれを承知の上でこの手順に踏み込んでいると思われるが、果たしてどちらが読み勝っているのか。
第3図  第3図以下の指し手
       △2四飛 ▲同 竜 △同 馬
 ▲4三と △6二銀 ▲6七桂 △8四銀
 ▲9七角 △4九飛 ▲2一飛 (第4図)

 △2四飛とぶつけるのが気持ちの良いさばきで後手好調を思わせる。先手も▲4三と△6二銀▲6七桂と8三玉型を咎めて反撃するが、△8四銀とがっちり投入するのが好判断。▲9七角は珍しい筋だが7九の地点にも利かした攻防の一手。以下お互いに飛車を下ろして第4図を迎える。
第4図  第4図以下の指し手
       △7九馬 ▲同 銀 △7六歩
 ▲7八金 △8六歩 ▲同 角 △8八歩
 ▲同 銀 △6六歩 ▲7五桂 △同 銀
 ▲同 角 △7七桂 (第5図)

 △7九馬とばっさり切ってしまうのが好手。以下△7六歩と手筋の突き出しを決め、△8六歩▲同角△8八歩がうまい手順。▲同銀と取らせることによって飛車の横利きが通り先手の穴熊が薄くなった。そこで△6六歩と催促するのもうまい一手。
第5図 ▲7五桂と跳ねられて単なるお手伝いのようだが、△同銀▲同角に返す刀で△7七桂が猛烈に厳しい。以下十数手で後手の勝ちとなり、山本五段、川上六段ともに四勝四敗と五分の星となった。

 個人的には第1図より先手・後手ともに手待ちをするのはあまり得策ではないと思うのだがどうであろうか。特に先手の▲7七金はマイナスになっている印象を受ける。その不備をうまくついた△3五角の両取り以下、川上六段の巧みな穴熊攻略が参考になった一局。

課題の局面から新手が現れるも…

 1月16日に行なわれたA級順位戦の羽生-久保戦は大変興味深い将棋となった。居飛車穴熊対四間飛車の定跡形となり第1図、筆者の課題局面でもある▲2六角型の基本形である。
 『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』では「▲3七桂は形を決め過ぎ」と述べられていたが、プロ間でもこの形が主流となりつつあるようだ。名人戦棋譜速報のコメントで渡辺竜王は「僕は居飛車党だから、ここで振り飛車がどう指すのが最善かがわからない」と述べている。候補手は△8五歩・△1二香・△4一飛の三つで、筆者が指してみたい△6五歩は含まれていなかった。
 ともあれ、ここからどのように進行していくのであろうか。

第1図  第1図以下の指し手
       △6二銀 ▲7八飛 △8三銀
 ▲7五歩 △4一飛 ▲7四歩 △同 銀
 ▲5五歩 △同 歩 (第2図)

 △6二銀が久保八段の温めていた新手か。対する先手は▲7八飛と転換する。△8三銀▲7五歩に△同歩▲同飛は次の▲4五飛が受からないため、後手はこの歩を取ることができない。△4一飛の待機策に▲7四歩△同銀と取り込み、5筋を突き捨てて第2図。ここで攻めを継続する大技が飛び出す。
第2図  第2図以下の指し手
 ▲7四飛 △同 金 ▲5三銀 △7一銀
 ▲7五歩 △同 金 ▲6四銀不成△7八歩
 ▲同 金 △2八飛 ▲5三角成(第3図)

 ▲7四飛とばっさり切って▲5三銀が露骨な攻め。△7八歩▲同金△2八飛なら▲6二銀不成△2六飛成▲6一銀不成△同飛▲4五桂が想定される手順だ。本譜は△7一銀と逃げ、▲7五歩△同金▲6四銀不成に△7八歩~△2八飛と反撃するも、平然と▲5三角成と成り込まれてしまった。
第3図  第3図以下の指し手
       △6二金 ▲7三銀不成△同 金
 ▲6八銀 △6四銀 ▲5二馬 △4四飛
 ▲7六歩 △7四金引▲8六桂 △8五金
 ▲7四桂 △7二玉 ▲7七桂 (第4図)

 △6二金の受けに▲7三銀不成~▲6八銀が冷静な手順。△6四銀と金取りを受けるも、▲5二馬と逆先で返され△4四飛と浮いた形はいかにも後手の飛車角に働きがない。対する先手は▲7六歩△7四金引に▲8六桂と急所に打ち据えて好調である。
第4図 △8五金に▲7四桂△7二玉▲7七桂とパンツを脱ぐ攻めが出て、金の捕獲が確定しては先手の攻めは切れなくなった。以下攻め倒して羽生四冠の快勝、一敗をキープした。一方の久保八段は二勝五敗と苦しい成績に。

 第1図からの新手△6二銀は筆者としては不発に終わったと考えている。それにしても羽生四冠の攻めが見事で、まさに。『羽生善治の終盤術1 攻めをつなぐ本』の題材にそのまま採用されてもおかしくないような内容であった。やはり▲2六角型は難敵である、と再認識させられた一局。

先手四間飛車ならではの悩み

 11月18日に行なわれたB級2組順位戦の第7回戦より、畠山成-杉本戦を検討してみる。振り飛車党同士の対戦であるが、畠山七段の四間飛車に杉本六段は居飛車穴熊を採用、▲6六銀型対△8四角型というオーソドックスな形となり第1図。
 9月16日の第4回戦の対小野八段戦でも手順こそ違えどまったくの同型となっており、その将棋は『四間飛車破り 【居飛車穴熊編】』P122のように△6四歩(本では先後逆なので▲4六歩)と仕掛けているが、本局は違った進行を見せる。

第1図  第1図以下の指し手
       △3二金 ▲8八角 △7三角
 ▲2七銀 △4二銀 ▲3八金 △3一銀右
 ▲7七角 △8四角 ▲9八香 △7三角
 (第2図)

 △3二金は後手番の上に一手損する不思議な手で、控室の検討では「千日手も視野に入れた戦略かも」とのこと。振り飛車から動く筋はないと見て▲8八角と待機し、先手は銀冠に、後手は松尾流へと組み替える。さらにお互い角を動かすなど手待ちをして第2図。
第2図  第2図以下の指し手
 ▲6九飛 △8二飛 ▲6八飛 △6二飛
 ▲6六銀 △8四角 ▲5七銀 △7三角
 ▲6九飛 △8二飛 ▲6八飛 △6二飛
 まで千日手(第3図)

 同一局面が4回登場しあっけなく千日手が成立してしまった。先手としては不満な結果と思われるが、何か打開策はないのだろうか。
 考えられるのは第1図以下△3二金に▲6六角だが、△同角▲同銀△8二飛▲7七銀の局面は先手から動きづらい。
第3図 後手四間飛車の立場で千日手は歓迎という手順でも、先手四間飛車となれば話は別である。先手では▲6六銀型を用いたい筆者としては、居飛車にこうも簡単に千日手含みの作戦が生じてしまうというのはあまり有り難い事態ではないのだが…。
 さりとて6六の銀を5七に引かなければ今度こそ居飛車に△6四歩と仕掛けられるということもあり、第1図以前に先手が手を替える場所というのは見当たらない。第1図以降では先ほどの角ぶつけの筋くらいしか局面を動かす手はないように思える。

 先後を入れ替えての指し直し局は畠山七段が制したものの、定跡形と言って差し支えのない形から戦いらしい戦いも起こらずに千日手になってしまうという、不可解な点の残る一局となった。いずれにせよNHK杯の深浦-川上戦なども含めて、四間飛車の△4四銀(▲6六銀)型対居飛車穴熊の▲2六角(△8四角)型がプロ間での流行形であり、また振り飛車にとって厄介な対策であることに間違いはなさそうである。

▲2六角・3七桂型からの仕掛け

 11月13日に放送されたNHK杯トーナメント2回戦第15局の深浦-川上戦を早速検討してみたい。川上六段の四間飛車に対して深浦八段は居飛車穴熊を採用、角を2六に転換して非常にオーソドックスな形となり第1図を迎える。
 以前に当ブログで紹介した銀河戦決勝トーナメント二回戦の渡辺-櫛田戦と非常に良く似た局面となった。違いは振り飛車の香車が1二に上がったか1三か、その一点だけである。ちなみに図の△1三香に代えて△8五歩と指した実戦例もある(C級1組順位戦第2回戦の田中魁-石川戦)。
 渡辺-櫛田戦はここから▲2四歩△同歩▲3五歩と先手が攻勢に出たものの、どうやらやや無理気味というのが結論のようである(結果は渡辺竜王勝ち)。本局は深浦八段が違った筋で第1図から仕掛ける。

第1図  第1図以下の指し手
 ▲7五歩 △同 歩 ▲2四歩 △同 角
 ▲5三角成△同 金 ▲2四飛 △同 歩
 ▲3一角 (第2図)

 ▲7五歩から攻める筋は部分的に形は違うものの、『新・振り飛車党宣言!1』のP77に掲載されている手順と同じだ。途中▲2四歩に対して△同歩と取り、▲3五歩に△4三飛▲3四歩△4二角と辛抱する展開も考えられ、前述の田中魁-石川戦で現れている。
 本譜の△2四同角には角と飛車を次々に切り、▲3一角と打って第2図。
第2図 
  第2図以下の指し手
       △5二飛 ▲4五桂 △6三金
 ▲7四歩 △8五桂 ▲5三銀 △3二飛
 ▲6四銀成(第3図)

 ここで△4三飛と逃げる手が『新・振り飛車党宣言!1』P78では本筋とされている。以下▲2二角成△3三桂▲3二銀という手順が紹介されているが、この将棋では穴熊が▲7九金型のため同著のように△3八飛と打つ手が金取りの先手にならない(参考1図)。
参考1図 また△4三飛に▲3二銀△3三飛▲4二角成の時に、後手の香車が1三にいるため△1三飛と逃げる手がなく指しづらいのではないか、という行方七段の解説があった。以上二つの理由から確かに△4三飛は損に思えるが、結果的にはそれでもここに逃げるべきではなかったか。
 本譜は△5二飛に▲4五桂△6三金▲7四歩。これを△同金は▲5三角成で振り飛車不利というのが『新・振り飛車党宣言!1』の見解である。△8五桂と跳ねる手には▲5三銀が重いようでも好手。△3二飛に▲4二角成ではなく、▲6四銀成が巧みな後続手段だ。
第3図  第3図以下の指し手
       △6二金引▲5三角成△6三歩
 ▲7三歩成△同 金 ▲同成銀 △同 銀
 ▲5四馬 △7二飛 ▲5三桂成(第4図)

 第3図で△3一飛は▲6三成銀△同銀▲7三金で後手がまずい。△6二金引▲5三角成もやはり馬を取れず△6三歩と辛抱するしかない。
 7三の地点で清算してから▲5四馬と、3一にいた角を手順に好所へ移動することができた。以下△7二飛に▲5三桂成も実現し先手好調だが、ここで後手に鍛えの入った一着が出た。
第4図  第4図以下の指し手
       △5一飛 ▲8六歩 △6四銀打
 ▲8五歩 △5三銀 ▲6五馬 △7四角
 ▲8四歩 △6五角 ▲同 歩 △8四銀
 (第5図)

 △5一飛の自陣飛車が粘り強い一手で▲6三成桂を防いでいる。対する先手の▲8六歩も穴熊の急所を開けて怖いが、8五の桂馬を取りつつ玉頭に迫ろうという判断。以下手順は進み第5図、先手も盤上の攻め駒がなくなり、ここで一息つくと後手の逆襲を許してしまいそうだが…。
第5図  第5図以下の指し手
 ▲4六角 △7三角 ▲5五桂 △4五歩
 ▲2四角 △8七歩 ▲9七銀 △8五桂
 ▲8六銀 (第6図)

 ▲4六角の王手が厳しかった。合駒をするなら△7三角はこの一手だが、そこで▲5五桂がうまい組み合わせ。
 △4五歩は▲3七角や▲2八角なら▲6三桂成を防げる(先手の角を素抜く筋がある)という意味だが、今度は飛車取りに▲2四角とこちらに出る手があった。
第6図 以下後手の反撃に対して銀を避わして第6図。ここからも熱戦が展開され、途中で先手に変調かと思わせるような攻めが出たものの、最後は際どく余して深浦八段の勝利、三回戦へと駒を進めた。

 攻防ともに見ごたえのある好局であったが、仕掛け以降は常に居飛車がペースを握っている印象がある。個人的には第1図での△1三香(△1二香も同様)のような手待ちよりは、△6五歩と振り飛車から仕掛けてみたい気もするのだが…このあたりの変化は今後の研究課題としたい。
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