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四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

気持ちの良い一手が続く

 既に一月近く前の対局であるが、C級2組順位戦第8回戦の木下-村中戦を見ていきたい。先手の▲5七銀型四間飛車に後手は△7二飛から急戦を試みたものの局面は収まり、持久戦模様となって第1図。7二に打たされた歩がいかにもつらくここでは先手が作戦勝ちと思われるが、具体的にどのような手順で優位を築き上げていくのだろうか。

第1図  第1図以下の指し手
 ▲6五歩 △同 桂 ▲同 桂 △同 銀
 ▲4七桂 △8六歩 ▲同 歩 △4五歩
 ▲同 歩 △8八歩 (第2図)

 ▲6五歩以下歩損ながらも桂交換を果たし、手にした桂馬を▲4七桂と打つのは次に▲3五歩を見せていかにも味の良い一手。後手も8筋を突き捨て、さらに△4五歩と角筋を通して▲同歩に△8八歩と8筋突破を目指すがいかにも重い手だ。ここから振り飛車は相手の手に乗って巧みなさばきを見せる。
第2図  第2図以下の指し手
 ▲6九飛 △8六飛 ▲7七金 △同角成
 ▲6五飛 △6四金 ▲6六角 (第3図)

 ▲6九飛と逃げて、△8六飛に▲7七金が気持ちの良い一手。△8五飛ならもちろん▲8六歩だ。△同角成▲6五飛とお互いに大駒をさばいたが、後手は8八の歩が邪魔駒となっている。
 次の▲6三飛成を防いで△6四金は涙の出るような辛抱だが、そこで▲6六角と王手でぶつけるのがこれまた気持ちの良い一手で第3図を迎えた。
第3図 これには△6六同馬の一手だが、▲同飛で手順に飛車取りをかわしつつ角交換を果たすことができた。6四に打たされた金、8八に打った歩がいずれもひどく先手の優勢は疑うべくもない。
 以下△8七飛成に▲4四歩△同金▲6二角が急所の攻めとなり、そこでさらに△3三角というつらい一手を後手に強いることができた。結果的には4七の桂馬も2三の銀と交換になるという大戦果を上げた先手の快勝に終わり、木下六段は四勝三敗と白星先行に。対する村中四段は手痛い二敗目で昇級戦線から大きく後退してしまった。

 振り飛車に気持ちの良い手が連発し、目の薬ともいうべき一局であった。

遠山新四段のデビュー戦

 昨年末の読売新聞に掲載された第19期竜王戦6組1回戦の遠山-早咲アマ戦を取り上げてみたい。12月10日に行なわれた本局は遠山新四段のデビュー戦であったが、先手四間飛車対後手の銀冠模様となり第1図。
 この将棋では微妙に形は違うが、『四間飛車を指しこなす本3』にも載っており、また『超過激!トラトラ新戦法』で「串カツ囲い」と紹介されていた陣形は早咲アマが考案されたと言われている。金銀を密集させて得意の形に構えた後手はここから仕掛けた。

第1図  第1図以下の指し手
       △8六歩 ▲同 角 △6四歩
 ▲7七桂 △7五歩 ▲同 歩 △4四歩
 ▲5五歩 △同 歩 ▲5四歩 (第2図)

 8筋の突き捨ては居飛車にとって基本とも言うべき一手。対する▲8六同角では▲同歩が優り、以下△6四歩▲5五歩のような展開にすべきだったようだ。△7五歩▲同歩に△4四歩が三手一組の好手段で、歩を入手しての△7六歩▲同銀△8六飛▲同歩△4九角が狙いだ。本譜は先手も▲5五歩~▲5四歩と反撃するが…。
第2図  第2図以下の指し手
       △4三金直▲5五飛 △4五歩
 ▲5八飛 △5二歩 ▲4五桂 △4四角
 ▲3七金寄△7一角 (第3図)

 △4三金直が落ち着いた一手。▲5五飛△4五歩▲5八飛に△5二歩と受けて磐石である。▲4五桂△4四角に▲3七金寄は先ほど述べた△7六歩~△8六飛~△4九角の攻め筋を受けた際に▲6七銀と引き、後に銀を4七に上がる手を作ったものだが、ここで攻めを焦らずじっと△7一角と引くのが好手だった。
第3図 「勢いのない手なので軽視していたが、これで(先手に)手がないのではひどい」という遠山四段の感想があった。第3図以下は△4四歩~△4五歩と桂馬を取る手が間に合う展開となり後手が優勢、そのまま早咲アマが勝ち切って二回戦に駒を進める結果となった。

 振り飛車党にとって居飛車の△8六歩(▲2四歩)を歩で取るか角で取るかは悩ましい場合が多い。本局は▲同角が疑問となり勝負の明暗を分けた。第3図での△7一角とともに、印象に残った一局。初戦は残念な結果に終わったが、遠山四段の今後の活躍に期待したい。

5筋位取りに5筋から反撃

 B級2組8回戦、二局目は西川-森戦を取り上げる。最近特に後手番で多様する森先生の四間飛車に、西川七段は5筋位取りで対抗、持久戦調の展開となり第1図を迎える。『四間飛車の急所1』P127のB図より△7三桂▲6六歩と進めれば同一局面となるが、ここでも振り飛車側には本通りの有力策があった。

第1図  第1図以下の指し手
       △5二飛 ▲4六銀 △5四歩
 ▲同 歩 △同 銀 ▲5五歩 △4五歩
 ▲5四歩 △4六歩 ▲同 歩 △5四飛
 (第2図)

 △5二飛と回るのがその有力策。5筋の位を確保するには▲4六銀しかないが、それでも△5四歩▲同歩△同銀と繰り出し▲5五歩に△4五歩が好手。どちらの銀で取っても△5五銀が幸便となる。本譜は銀の取り合いとなって、▲4六同歩に△5四飛で第2図を迎える。
第2図  第2図以下の指し手
 ▲4七金 △5一飛 ▲2四歩 △5五歩
 ▲4五銀 △5六銀 ▲同 銀 △同 歩
 ▲5五歩 △同 飛 ▲6七銀 (第3図)

 先手は▲4七金と守るが「構想に無理があったか」との西川七段のコメントがある。△5一飛▲2四歩に構わず△5五歩と打ち、▲4五銀にも△5六銀とぶち込む。▲2三歩成の余裕はないと見て先手は応対するが、△5六同歩と手順に伸ばして後手好調である。▲5五歩以下先手は飛車を近づけて受けようとするが…。
第3図  第3図以下の指し手
       △5七銀 ▲5六金 △6八銀成
 ▲同 玉 △2四角 ▲同 飛 △5六飛
 ▲2七飛 △4六飛 ▲4七歩 △3六飛
 ▲3七銀 △5六歩 (第4図)

 露骨に△5七銀と打ち込む手があった。▲5六金△6七銀成▲同金に△2四角とここで手を戻す。▲5五金と飛車を取るのは△4六角で王手飛車がかかってしまう。▲2四同飛には△5六飛と金を取り、▲5六同銀ならそこで△2四歩と取れば駒損でも陣形の差がありすぎて先手が勝てない。
第4図
 そこで5七の地点を受けつつ▲2七飛と引くのは仕方ないが、後手も△4六飛~3六飛と横に逃げて、▲3七銀と使わせてから△5六歩で第4図。
 ここで▲3六銀と飛車を取るのは△5七金で寄せられてしまう。実戦は▲5八銀打と頑張り、△3五飛▲2三飛成△5五飛以下後手の攻めも紙一重に見えたものの、結局最後は森九段が攻め合いから受けの決め手を放って終局、二敗を守り昇級戦線に踏みとどまった。一方の西川七段は三勝四敗で黒星が一つ先行する形に。

 森九段の豪快な捌きが、西川七段の手厚い5筋位取りを結果的には粉砕する形となった。攻める振り飛車としてはお手本とすべき一局。

位を取られた位取り

 C級2組順位戦第8回戦の川上-西村戦より。川上六段の四間飛車に対して西村九段は玉頭位取りで対抗、振り飛車は金を四段目に繰り出す定番の作戦を用いて第1図を迎える。『四間飛車の急所1』P160の第13図から▲8五歩△5一飛と進んだ局面を先後逆にして、居飛車の囲いの形を少し変えた局面であり、部分的には実戦で良く現れそうな形だが、ここからどのように進行していくのであろうか。

第1図  第1図以下の指し手
       △5二飛 ▲5五歩 △同 歩
 ▲同 銀 △5四歩 ▲同 銀 △同 銀
 ▲5五歩 (第2図)

 △5二飛とここに回るのはあまり見慣れない一手。先手は構わず▲5五歩と合わせて攻撃を開始する。△同歩▲同銀△5四歩に強く▲同銀と取り、居飛車が金銀どちらで取っても▲5五歩で金気を取り返せるという手順もこの形での常套手段だ。本譜は△5四同銀▲5五歩と進んだが、ここで後手はどう反撃するか。
第2図  第2図以下の指し手
       △4五歩 ▲5四歩 △7七角成
 ▲同 桂 △6八角 ▲6六角 △5九角成
 ▲同 金 △8九飛 ▲4八銀 △3三銀
 (第3図)

 △4五歩と突き、▲5四歩に△7七角成~△6八角で▲5九飛型を咎めた格好となった。しかし先手も▲6六角と攻防に放ち、△5九角成▲同金△8九飛にも▲4八銀と受けて、飛車一枚では居飛車にも早い攻めがなさそうだ。後手も△3三銀と手を戻して第3図。
第3図  第3図以下の指し手
 ▲6四歩 △同 歩 ▲6三角 △8二飛
 ▲3六歩 △同 歩 ▲3五歩 △2三銀
 ▲5三歩成△同金上 ▲4五角成△4四歩
 ▲3六馬 (第4図)

 6筋を突き捨てて▲6三角が急所の角打ち。△8二飛に▲3六歩が気がつきにくい一手で、△同歩に▲3五歩と打つ。△同銀は▲4五金を嫌ったか△2三銀と引いたが、▲5三歩成以下馬を作り、△4四歩▲3六馬で逆に玉頭を振り飛車側が制圧する形となった。
第4図 とはいえ先手からもとりわけ早い攻めがあるわけではなく、局面自体はいい勝負か。第4図から△8六歩以下熱戦が続いたものの、結果的には終盤での千日手という結末に。打開する権利は先手にあり、実際形勢は先手良しにも見えたのだが…。
 指し直し局は川上六段が制して三勝目を上げた。西村九段は未だ一勝と苦しい星取りに。

 対玉頭位取りでのよくある形とよくある手順を経て、馬を引き付け筆者好みの手厚い指し回しを川上六段が見せてくれた。勝負はつかなかったものの参考になった一局。

藤井システムを指さない理由

 C級2組順位戦第7回戦の室岡-田村戦より。前局で今期初黒星を喫した室岡七段は得意の四間飛車を採用、藤井システム模様の駒組みを進めた。対する田村六段は△3三角~△4二角と引いて▲8八飛を強要、そこから端玉(串カツ囲い)に囲った。お互いがっぷり四つに構えて第1図、ここから後手が動く。

第1図  第1図以下の指し手
       △3三桂 ▲2九玉 △4五桂
 ▲同 桂 △4四歩 ▲6五歩 △4二角
 ▲4六金 △4五歩 ▲同 金 (第2図)

 居飛穴が平気でパンツを脱ぐことも多くなった昨今、端玉の構えから△3三桂と跳ねても驚くべきことではないのかもしれない。角筋を避けた▲2九玉にそれでも△4五桂と跳躍し、▲同桂△4四歩で桂馬を取り返しにかかる。▲6五歩△4二角と追ってから▲4六金△4五歩▲同金で、歩損もなく局面の均衡は取れていそうだ。
第2図  第2図以下の指し手
       △3三角 ▲4四歩 △4三歩
 ▲3五歩 △同 歩 ▲2五歩 △4四歩
 ▲3五金 △3四歩 ▲2四歩 △3五歩
 ▲2三歩成△同 金 (第3図)

 △3三角に▲7七角のぶつけは角交換後の△4四歩で先手いけない。本譜の▲4四歩には△4三歩とこじ開けにかかる。玉頭戦の中、先手はどこかで▲4六角と覗きたいが当たりが強くなり指し切れないか。以下は金銀交換となり第3図を迎える。
第3図  第3図以下の指し手
 ▲3四歩 △同 金 ▲4三銀 △2四金
 ▲3四歩 △5一角 ▲5四銀成△7三角
 ▲6四歩 △3四金 ▲4七銀 △8四角
 (第4図)

 ▲3四歩以下先手は手を作るものの、▲5四銀成で一段落してしまった。△7三角に▲6四歩と角筋を止めるが、△3四金と拠点の歩を払う手が味が良い。▲4七銀に△8四角と、未然に▲6三歩成の当たりをかわしつつ先手陣を睨んで後手好調に思える。
第4図  第4図以下の指し手
 ▲1四歩 △同 歩 ▲4六銀 △2八歩
 ▲1八玉 △5二飛 ▲5五歩 △2五桂
 ▲1七桂 △5四飛 ▲同 歩 △2九銀
 (第5図)

 1筋を突き捨てての▲4六銀で次に▲3五銀を狙うが、△2八歩が鋭い打ち込み。▲同玉や▲同金は△3六桂が残るので▲1八玉だが、これが敗着ではないだろうか。△5二飛と活用されたのが大きく、△5六飛と走られてはまずいため▲5五歩だが銀が質駒になってしまった。
第5図 △2五桂の追撃も厳しい。狙いは言うまでもなく△5二飛~△1七銀だ。今さら▲2八玉としても△2六歩~△2七歩のような攻めが厳しそうだ。
 実戦は▲1七桂と受けたもののやはり△5四飛と切られ、△2九銀と打たれた第5図では先手玉は寄り筋に入ってしまった。以下▲2八玉△2六歩の要領で的確に攻めて後手が制勝、田村六段が三勝目を上げた。一方の室岡七段は痛い連敗で昇級争いから一歩後退した形に。

 筆者の見立てでは後手の仕掛け以降は徐々に先手の模様が悪くなっているように思えた。玉頭から動いたのも「仕方なく動いた」あるいは「動かされている」印象を受ける。
 先手としては8八の飛車が最後まで働かなかった(6八角で横利きを遮断されているので受けにも使えない)のが大きい。その遠因は藤井システムの採用にあるというのは言い過ぎだろうか。つまり居玉のまま駒組みを進めたため居飛車の引き角に対して▲8八飛と回らされたのが、後々になってあくまで結果的にはなのだが響いているように感じられるのだ。
 筆者が藤井システムを指さない最大の理由はこの▲8八飛が気に入らないという点にある。居飛車穴熊は防げても、引き角にされた後にミレニアムや本局のような端玉(串カツ囲い)に組まれた時に戦いづらい。飛車を6八に置いたまま戦うことができれば、前者に対しては自戦記にも書いた通り▲6六銀(△4四銀)型が、後者に対してはダイヤモンド美濃に組むような構想が有力となるのだが…。
 藤井システムに対して扱いが冷たい、掘り下げが甘いという鋭く的確な指摘をコメントで頂いた後で再びこのような記事を書くのも気が引けるが、藤井システムの激しい展開を好まないというよりも、藤井システムに対して引き角にされた時の▲8八飛と回らざるを得ない展開を嫌う側面が筆者の中で強いということに改めて気づいた。そういう意味でも取り上げる価値のあった一局と言えよう。
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