四間飛車党の備忘録

四間飛車メインで振り飛車・相振り飛車・右玉なども含めあれやこれや綴っていきます。

先手四間飛車対後手右銀急戦 ▲8三角(3)

第1図 今回も振り飛車が▲8三角と打つ形を研究してみることにしたい。第1図は▲8三角以下△8二飛▲6一角成△6六銀▲7八飛と進んだところ。前回ではここで△8六歩だったが、今度は居飛車が手を変えてみる。

  第1図以下の指し手2
       △4四角 ▲4五歩 △3五角
 ▲6七銀 △7七歩 ▲同 桂△6七銀成
 ▲同 金 △8六歩 (第2図)

 佐々木-行方戦(2004年3月01日・王座戦)で行方六段(当時)は△4四角を選択した。
第2図 7一の地点にも利かせた攻防の一着である。▲4五歩の突き出しにも△3五角で今度は5七の地点をにらむ。▲6七銀とぶつけて飛先を通しつつ間接的に△5七銀成を防ぐが(3五の角が移動すれば▲7一飛成がある)、△7七歩▲同桂と遮断してから△6七銀成と銀の方を取り、▲同金に△8六歩と突いてきた。ここで振り飛車に軽妙手が出る。

  第2図以下の指し手
 ▲8五桂 △5一金寄▲7一馬 △8七歩成
 ▲7五飛 △7一角 ▲同飛成 △8五飛
 (第3図)
第3図
 ▲8五桂と跳ねて飛車先を通すのが盲点になりやすい一手。△同飛なら▲7二飛成と急所の筋に成り込むことができる。△5一金寄として馬を移動させ、△8七歩成も入れて居飛車も最善を尽くすが、第3図では振り飛車が桂損したものの先に竜を作り、さらには手番を握っている。後手の飛車先も重く、うまい手があれば優勢を得ることができそうだ。

  第3図以下の指し手
 ▲4四歩 △同 歩 ▲6四歩 △4六角
 ▲4七銀打△6四角 ▲7六金 (第4図)
第4図
 ▲4四歩が敵陣の急所を突いて厳しい。△4四同歩にさらに▲6四歩。これを△同歩は▲7四角くらいでまずいので△4六角と攻防の一手を放つが、冷静に▲4七銀打と固めて△6四角に▲7六金が味の良い活用だ。実戦は以下△4五飛▲4六歩△同飛▲6五金とさらに力強く金を押し出し、入玉含みで粘る居飛車玉を佐々木四段が的確に寄せて勝ち切った。
 以上の手順は実戦の進行そのままではあるが、四間飛車側の指し回しはそのまま定跡手順と言ってもおかしくないほどの見事なものである。

 ▲8三角と打つ手に関してはまだまだ居飛車・振り飛車双方に手が隠されているようにも思えるが、三つの実戦例全てで先手四間飛車が勝利を収めているため、プロの対局にはここ1年ほど現れていないようである。固い玉で勝ちやすい戦いに持ち込むのを良しとする現代棋界においては仕方のないことかもしれないが、先手四間飛車に右銀急戦で立ち向かう果敢な挑戦者が再び登場することを願いつつ研究を終えたい。
 なお、今後新たな実戦例・手順などが現れれば、情報が入り次第取り上げる予定である。
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先手四間飛車対後手右銀急戦 ▲8三角(2)

第1図 今回も引き続き▲8三角型の研究である。前回では第1図から△7三飛と逃げてみたが、どうも居飛車うまくいかなかった。それでは△8二飛と逃げるとどのような展開になるのだろうか。

  第1図以下の指し手2
       △8二飛 ▲6一角成△6六銀
 ▲7八飛 (第2図)

 △8二飛にもやはり▲6一角成の一手。7四では飛車先が重い。△6六銀に替えて△8八角もありそうだが、▲6七銀に△7七角成を余儀なくされるのが不満か。
第2図 プロの実戦例は二局あるが、いずれも△6六銀▲7八飛までは同一の進行だ。分岐点は第2図だが、まずは千葉-藤倉戦(2004年2月17日・順位戦)の進行をもとに研究してみる。

  第2図以下の指し手1
       △8六歩 ▲6七銀 △7七歩
 ▲6八飛 △7五銀 ▲6六銀 △8七歩成
 ▲7五銀 △7八と ▲6六飛 △8九飛成
 ▲8六飛 (第3図)

 藤倉四段は第2図で△8六歩と突いたが、それに対して▲6七銀が手筋の切り返し。
第3図 △6七同銀成なら強く▲7一飛成と踏み込んで振り飛車指せそうだ。そこで△7七歩▲6八飛を入れて△7五銀と逃げたがこれが疑問手。後で代替手段を解説する。
 本譜は▲6六銀とぶつけられ、△同銀▲同飛と6六の好所に飛車をさばかれてはまずいので勢い△8七歩成としたが、銀を手にした上△8九飛成に▲8六飛と気持ちよく飛車をぶつけて振り飛車好調である。第3図以下は△9九竜▲8一飛成△4二金寄に▲8九歩と手堅く底歩を打って恐いところをなくし、攻めに専念した千葉四段(当時)が勝利を収めた。
第4図 戻って△7五銀では△5五銀が正着のようだ(第4図)。これなら銀にヒモがついており、また第3図のように▲8六飛とぶつける筋もない。
 第4図では先手も▲5六銀とぶつけるくらいか。△8七歩成には▲8三歩を用意しており、8筋突破を必要以上に警戒することもない。かといって5五の銀が逃げれば▲6四歩がある。
 ▲5六銀に対して、6四に利かせつつ▲8三歩を消す△8四飛は有力そうだ。▲5五銀△同銀▲6六飛なら重く△7五銀と打っておく。もしくは振り飛車から▲7五銀と打つ手もあるかもしれない。今後の研究課題ではあるが、第4図から▲5六銀で難しいが振り飛車も指せると思う。

 第2図で△8六歩とすぐに攻めるのはお互い最善を尽くせば第4図となり、先手も指せるが難しい分かれか。次回は第2図で別の手を考えてみることにしたい。

先手四間飛車対後手右銀急戦 ▲8三角(1)

第1図 前回まで第1図より▲6七銀、▲8五銀の変化をそれぞれ研究してきたわけであるが、いずれも居飛車に最善を尽くされると先手思わしい結果とは言えなかった。そこで注目されたのが第1図で▲8三角と打つ手である(第2図)。
 筋としては四間飛車対居飛車急戦の将棋に良く生じる手ではあるが、▲6四歩と突き捨てを入れないことからも分かる通り、この角打ちは自陣に馬を作って手厚く指すことが狙いではない。▲6一角成として敵陣に脅威を与える、攻めの一着である。
第2図 第2図のように▲8三角と打った実戦例は三局。その全てが先に述べた▲8五銀の変化を打ち破る決定版と目される千葉-西尾戦(2004年1月14日・竜王戦)の後に現れている。飛車取りであるから逃げる一手だが、7一や6二に逃げては飛車が働かなくなる。となれば逃げ方は△7三飛と△8ニ飛の二通りだ。まずは△7三飛から検討してみることにしたい。

  第2図以下の指し手1
       △7三飛 ▲6一角成△8八角
 ▲8五銀 (第3図)

第3図 上記手順は遠山-菊地戦(2004年6月11日・三段リーグ)そのままの進行である。あくまで7筋をにらむ△7三飛には先手も▲6一角成の一手。そこで△5一金寄なら馬が死んでいるようだが▲7四歩が用意の一着である。△同飛と取らせることにより▲8三馬が可能という仕組みだ。応用範囲の広い筋なので留意されたい。
 よって居飛車は△8八角と打って攻める。放置すれば△7七角成▲同桂△7六飛で銀損、▲6七銀も△7七角成▲同桂△同飛成で▲6六角と打てない。困ったようだが、ここで▲8五銀が好手である。一見すると△7七角成▲同桂△同飛成で全然ダメのようだが……。
第4図
  第3図以下の指し手1
       △7七角成▲7四歩 △9九馬
 ▲7三歩成△同 桂 ▲7ニ飛 △4二金寄
 ▲7三飛成(第4図)

 △7七角成には▲7四歩が継続の手段で飛車交換に持ち込める。この歩を打つための▲8五銀だったのだ。以下の手順は一例だが、第4図では9九の馬が今一つ攻めに利かず振り飛車が有望。遡って▲7四歩に△8三飛も(▲同馬ならそっぽに行き得をするが)、今度は▲7七桂と馬を取る手が8五の銀にヒモをつけぴったりだ。
第5図
  第3図以下の指し手2
       △7七飛成▲同 桂 △7九飛
 ▲8二飛 △4二金寄▲5六歩 △4四銀
 ▲6四歩 (第5図)

 △7七角成の変化を不満と見たか遠山-菊地戦では△7七飛成と取ったが、いかにも変調である。加えて▲同桂に△同角成とも取れない(▲7ニ飛が馬取りと▲5ニ馬の両狙いで痛すぎる)。以下も実戦通りの手順だが、第5図の▲6四歩が軽妙手。△同歩は▲6三歩と垂らし、手抜けば▲6三歩成といずれもと金ができる。
 本譜はこれを△6九飛成と防いだがいかにも利かされだ。以下▲7八歩(これも好手)△7九角成▲5九金引△6四竜と竜を追い返してから▲8一飛成で先手優勢、そのまま押し切り四間飛車の快勝譜となった。
 第2図で△7三飛と逃げるのはうまくいかないようだ。次回では△8ニ飛の変化に移る。

先手四間飛車対後手右銀急戦 ▲8五銀(2)

第1図 前回に引き続き▲8五銀の変化を研究してみたい。第1図で△7六歩と指すのは居飛車もうまくいかなかったので、別の手を考えてみる。

  第1図以下の指し手2
       △7七飛成▲同 桂 △7六歩
 ▲同 銀 △7九飛 ▲8二飛 △7七飛成
 ▲6七銀 (第2図)

 第1図で△7七飛成の変化は、▲8五銀に替えて▲6七銀と引いた場合に比べて居飛車の8五の歩がただで取られた勘定になり損と前回では書いた。
第2図 しかし△7六歩でうまくいかない以上は△7七飛成とするしかない。以下順当な手が続くが、△7九飛に対して▲8六角とは実際打ちづらいであろう。▲8二飛とここに打つのは△7七飛成に▲6七銀を用意したもの。▲7一飛△7七飛成▲6七角と進めるのは△7九竜と入られ、一歩得はしているものの前々回説明した変化と大差ない。
 第2図と同一局面に進んだプロの実戦例は二局ある。順を追って解説していきたい。

  第2図以下の指し手1
      △7三桂 ▲6四歩 (第3図)
第3図
 △7三桂と取られそうな桂馬を逃げる手はいかにも味が良い。久保-谷川戦(2002年9月27日・王将戦)で後手の谷川先生はこう指している。しかしそこで▲6四歩が好手。△同銀は▲6六角、△同歩は▲6三歩と垂らされるので取りづらい。実戦は第3図以下△7四竜▲6一角△4二金寄▲8三角成△6四竜▲7ニ飛成と進んで先手四間飛車勝ち。
 しかし結論から言えば、もう一つの実戦例が▲8五銀の一手を打ち破ることになる。

  第2図以下の指し手2
第4図       △7一竜 ▲8四飛成△7九竜
 ▲8一竜 △7五桂 (第4図)

 これは千葉-西尾戦(2004年1月14日・竜王戦)の進行である。前回に続き居飛車側に西尾四段の名前が出てきた。単に△7九竜でも同じようだが、いったん▲8四飛成と竜をそっぽに追いやり相手の手を限定する意味がある。
 ▲8一竜に△7五桂と打って第4図。第2図で単に△7五桂もありそうだが、▲5六銀とぶつけられて銀交換になると先手の飛車が二段目にいるため▲5三銀の筋が常につきまとう。かと言って△4六銀では打った桂馬が空振り気味だ。
第5図 第4図で▲5六銀なら△同銀▲同歩に△6七桂成と進めて第5図。これを▲同金と取るのは△4八銀とおなじみの手筋が飛んでくる。取ればもちろん△3九角だ。▲2四桂の攻め合いは強く△同歩と取り、▲2三角△同玉▲4一竜の瞬間が詰めろではなく、△5八成桂と取る手が△3九角以下の詰めろになっているため居飛車の一手勝ちである。
 実戦で千葉四段(当時)は第4図で▲4五角と曲線的な変化を選んだがこれでは苦しい。△6七桂成▲同角△4六銀以下、最後は受け切りの形で後手の西尾四段が勝った。
 第1図の▲8五銀は一瞬ハッとさせられる工夫した一手だが、歩を取られて損することにとらわれず普通に指せば居飛車有望のようである。この将棋以降▲8五銀と出る手は姿を消し、代わりに▲8三角と打つ手が注目されるようになった。次回からはその変化を調べてみたい。

先手四間飛車対後手右銀急戦 ▲8五銀(1)

第1図 今回は第1図より▲8五銀の変化を研究してみることにしたい。その局面が第2図である。銀がそっぽに行き一見すると筋の悪い指し手であるが、プロの実戦にも何度か現れている。
 ▲8五銀の主張点は、例えば以下△7七飛成▲同桂△7六歩▲同銀△7九飛と第1図で▲6七銀の際と同一手順で進んだ時に、8五の歩を先手が手持ちにしている所にある。またこのことにより▲8六角と打つような筋も生じている。この変化となれば▲6七銀よりも▲8五銀の方が優っているのは明確だが、第2図では居飛車に別の手がある。
第2図  第2図以下の指し手1
       △7六歩 ▲同 飛 △同 飛
 ▲同 銀 △7九飛 ▲7一飛 △8九飛成
 ▲8一飛成△1五歩 (第3図)

 第2図で△7六歩と打たれれば▲同飛の一手。6七銀型ではないので▲7八飛は△6六角と打たれてまずい。7六の地点で飛車交換をして、振り飛車の桂馬を跳ねさせずに△7九飛と下ろせるのが居飛車の主張だ。これには先手も▲7一飛と打つくらいだろう。お互いに桂馬を取り合い、△1五歩と急所の端を突かれて第3図。
第3図 これを▲同歩は△4六銀以下、前回紹介した一直線の寄り筋コースに入ってしまう。振り飛車はどう対処すべきか。

  第3図以下の指し手
 ▲2四桂 △4二玉 ▲7五角 △5三桂
 ▲5六歩 (第4図)

 実は第3図で▲1五同歩の実戦例もある。川上-西尾戦(2004年1月8日・銀河戦)で以下△4六銀に▲4四歩△同歩▲3六桂と進んだが、△5五角と受けられ上手くいかなかった。
第4図 そこで第3図では▲2四桂が手筋の一手。△同歩はもちろん▲2三角で、△同玉▲4一竜となっては居飛車受けが難しい。△4二玉で後続がないようだが、▲7五角の単純な王手がうるさい。△5三角には▲同角成△同金にもう一度▲7五角が悩ましいので△5三桂と受けるが、そこで▲5六歩が巧妙。△同銀は▲5五歩、△4六銀にも▲4七歩からやはり▲5五歩を狙う。難解ながら先手も指せる終盤戦と思われる。
 以上は『振り飛車ワールド 第四巻』での結論。しかし▲8五銀には居飛車側も別の対策を立ててきた。次回ではその研究に移りたいと思う。
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